想像上の恐怖

数ヶ月に一度やってくるこのFace Downモーメント。鬱とは違い、理由ははっきりしていることがほとんどです。仕事が上手くいかないとき、誰かとコミュニケーションが上手くいかず気まずくなってしまった時、プロジェクトが失敗しそうになったとき。。。

気分がどよーんと落ち込み、何もする気が出ないくせに、心臓はバクバク言っています。まさに、ストレスアウトしている状態。何かしなくちゃと分かっているのに、体が固まってしまい、何もできないのです。

この”Face Down Moment”に関しては過去に何度も書いています。メンタルヘルス的にはさいわい特に問題のない私でもこの「どん底」状態には何度も陥っていることから、これはもう、「生きている限り避けられない、時々やってくる状態」なのだな、とすこーしづつ、本当に少しづつ、学んできました。生きている限り、一生何も起こらずに平和に生活していけたら、なんと素敵なことか。でも、きっとすごく退屈な気もします。

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短い人生を、いかに幸せに生きる?

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様々なニュースで取り上げられているのでご存じの方も多いと思いますが、FacebookのCOOのシェリル・サンドバーグ氏の夫のデイビッド・ゴールドバーグ氏が47歳の若さでバケーション中に突然亡くなりました。

ゴールドバーグ氏がCEOを勤めていたSurveyMonkeyは使ったことがある、という程度ですし、サンドバーグ氏においても著書「Lean In」を途中まで読みかけたままの状態で数ヶ月たっており、とても彼女の「ファン」とまではいきませんが、彼女のTEDトークは大好きですし、尊敬するビジネスウーマンの一人であることには変わりありません。

昨日、彼女がFacebookに投稿したこちらの声明に、涙した人も多いはず。特に、「結婚式の日に、誰かが彼とは11年しか一緒に居られないと教えてくれたとしても、それでも私は彼と結婚していました。」という部分に、胸を打たれました。

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TEDトークをまとめたポッドキャストTED Radio Hour

最近ポッドキャストにはまっていて、暇があるといろいろ聞いています。特に気に入っているのがアメリカの公共ラジオNPR(日本のNHKのような感じでしょうか)。This American LifeなどはNPRの看板長寿番組でこちらもおすすめですが、今日ご紹介するのはTEDトークをトピックごとにまとめて紹介するTED Radio Hour。先日聞いて特に心に残ったのが年末に放送されたJust a Little Nicerというエピソード。

5人のTEDスピーカーの話をクリップで紹介しつつ、各スピーカーとのインタビューも交えた構成ですが、これが毎回深く考えさせられる内容で、とてもいいんです。

この日のエピソードはCompassion(思いやり)。
最初に登場するSally Kohnの仕事は保守寄りで有名なFOXニュースのコメンテーター(現在は主にCNNのようです)ですが、保守層の視聴者が多いFOXでリベラル、しかも同性愛者、プラス女性であることから、視聴者からの意地悪なコメントは後が経たないと言います。「頭悪いんじゃない」など、普通なら面と向かっては絶対に言わないようなことをネットでは平気で言う人が沢山いるそうです。
彼女のTEDトークでは、よく使われるPolitically Correctness(政治的、道徳的に正しいこと)ではなく、Emotional Correctnessが大事であると説いています。何を言うのかでなく、どう言うのか、が相手を説得する際に非常に重要だというのです。彼女はリベラルですが、時として自分以外の意見について否定的だったり、独善的だったりすると反省しています。ところが、政治的には彼女と正反対の意見の保守派の人たちは、一転して、ものすごくいい人が多いのだそうです。
彼女が一緒に仕事をしている保守派の有名なコメンテーター、ショーン・ハニティは、政治的には(彼女から言うと)99%間違っていると思える人ですが、Emotional Correctnessがものすごく高いため(空いた時間にはスタッフをブラインドデートにセットアップしたり、何か困ったことがあれば真っ先に助けてくれる)、そういう人だからこそ、たとえ自分と正反対の意見でも、とりあえず意見を聞こうという気になる人が多いのだと説明しています。

全く反対の意見に対して、あなたの主張は間違っている、と伝える場合でも、誠意を持って会話をすることが可能だ、そしてそれは必要なことであると彼女は言います。

彼女には沢山のヘイトメイルが届くそうですが、中にはとても心温まるメッセージも来るとか。特に嬉しかったのは「あなたの政治的意見には反対だけど、私は人としてのあなたの大ファンです。」というもの。それは彼女が何を言ったかでなく、どういうふうに言ったかが彼の心に響き、だからこそ彼女の話を聞こうという気になってくれたのでしょう。だからこそ、会ったこともないこの視聴者と、通じ合えることができたのだと。

Our challenge is to find the compassion for others that we want them to have us, that is emotional correctness.

自分に対して持って欲しい思いやりを相手に対して持つこと、つまりエモーショナル・コレクトネスを持つことが私たちの課題です。

I’m not perfect. But what I am, is optimistic.

私は完璧ではありませんが、希望は持っています。

思いやりとは何か

二人目のスピーカーは公共ラジオ・ポッドキャストのOn Beingという番組のホスト、Krista Tippett。実は私もこのエピソードがきっかけでクリスタの番組を聴くようになり、大ファンになったのですが、その話はまたの機会に。

クリスタのTEDトークは、Compassion(思いやり)について。

普段から常に人間であるとはいったいどういうことなのか、というテーマで多くの人にインタビューしているクリスタですが、Compassionという言葉には、新聞の『ちょっといい話』欄に載せられる感傷的なものや、または一般の人にはとうてい真似できないような英雄に使われるものというイメージがあると言います。

それではコンパッションを私たちに理解できる言葉で解釈するといったい何になるでしょうか。

クリスタはコンパッションは親切さ(Kindness)と言い換えられると言います。親切さというとあまりにもありふれたもののように思えますが、これは、毎日の生活の中で培われる美徳の副産物であり、またとても簡単に人を喜ばせることができるものであると言います。

コンパッションはまた好奇心が強い(Curious)ことであるとも。思い込みを捨てて、相手を知ろうとすることですね。

共感、許し、和解、そして存在ーその場に居てあげること、姿を見せること(Showing Up)もまた、「思いやり」の表現だと言います。

また面白いのが、思いやりとはまるで語学の習得のように実際に練習することができ、実践すればするほど身についてくるものなのだとクリスタは説いています。

思いやりの科学的背景

科学ライターのRobert Wrightは科学的な見地から、思いやりについて語ります。自然淘汰やゼロサム/ノンゼロサムゲームというゲーム理論に関して彼のTEDトークで触れています。人間というものは、自分に親しい人、自分に有利になる人にまず親切にするようにデザインされているので、他人に思いやりをもつことは簡単ではないと説いていますが、テクノロジーの発達よって、「親しい人」の定義がどんどん広くまた複雑になってきていると言っています。

黄金のルール

元修道女のKaren Armstrongは17歳で修道院に入り、あまりにもそこでの生活か惨めだったためオックスフォード大学でで文学を勉強するために修道院を辞めました。今では宗教の歴史家として活躍しているカレンですが、かつてはかなり毒舌だったそう。「あなたって誰のことも良く言わないのね」と指摘されたこともあるそう。

宗教から切り離されたあとで思いやりを発見したというカレンは、世界中の宗教を研究し始めて、どの宗教も黄金のルールというものを説いていると説明します。「自分がして欲しいことを、他人にしなさい」そしてその反対バージョンの「自分がして欲しくないことを、他人にしてはいけない」。ですが、今でもこのルールを守るのは時にはとても難しいと彼女も認めています。

この黄金のルールは、幼稚園の子供たちに教えるようなルールですが、世界中にはまだ沢山の戦争や対立に満ちあふれています。それはなぜかというと、心優しくなるよりも、正しくあることが重要であると思う人が多いからだそうです。宗教を自分のアイデンティティを強めるために利用している人が多いと。

こころの知能指数

心理学者のDaniel GolemanはEmotional Intelligenceという言葉を作り出した人として最もよく知られています。日本では「EQこころの知能指数」というタイトルで出版されています。

彼のTEDトークは、Empathyについて。

北米では、道ばたでホームレスの人たちがお金を集めているのは珍しい光景ではありませんが、彼らに小銭をあげる人たちはごく一部です。

ダニエル自身はほぼ毎回お金を恵んでいるとのこと。そして彼の質問は、お金をあげない人たちは、何故ホームレスを無視しているのか?ということです。

神学校に通う生徒たちを対象にクラスの半分にはGood Samaritan(善きサマリア人)、つまり見知らぬ人を助けてあげることの大切さ、そして残りの半分の生徒にはランダムな講義を聞かせ、その後別の校舎に向かう途中で、道で苦しんで居る人に出会うとどうなるか、というプリンストン大学の実験があります。結果は、サマリア人の講義を聞いたかどうかと苦しんでいる人を助けるかどうかには全く因果関係はなく、その生徒が急いでいるかどうかが鍵だったと言います。

ダニエル自身も同じような経験があるとのこと。ニューヨークの地下鉄で、苦しんで倒れている人を見かけたそうなのですが、周りの人たちはいっこうに気にとめず、歩き続けていたとのこと。ですがダニエルがその男性に声をかけた瞬間、周りに居た人たちが一斉に助けに集まったそうです。この男性は英語を話せず、お金がなかったため空腹で倒れたのだとわかるとすぐにジュースやホットドックを持ってくる人たちがいました。

ダニエルは、ホームレスの人々は多くの人々の周辺視野になってしまっている、大事なことは彼らに気づくことだと言います。

いちど気がつきさえすれば、上の例のように助けの手をさしのべる人たちは沢山いるのです。

また興味深いポッドキャストがあれば紹介していきますのでお楽しみに。

Daring Greatly: 挑戦する勇気

あっという間に2013年も最初の2週間を過ぎようとしています。ご挨拶が遅れましたが、今年も宜しくお願いしますね。

私の周りには新しい仕事、新しいプロジェクト、新しく子供が産まれる人などが沢山居て、巳年らしく、脱皮して新しい事にチャレンジするぞーというエネルギーがみなぎっています。私ももうすぐ新しいプロジェクトが始まるので楽しみです。(詳細は後日)

さて、新年というと、いろいろと目標を決める人が多いと思うのですが、何か決めましたか?私の周り(オンラインでもオフラインでも)では「毎年新年に目標決めても数ヶ月経つと忘れちゃうんで意味無し」という人や、「新年だからって何故新しい目標を決めなくちゃいけないの?思いついた時にやれば良いのよ」という人も居て、最近のトレンドとしては、「1年の抱負」というのはあまり人気がないみたいですが、やはり新年を大切にする日本人としては、何か抱負、目標を決めたいなと思う私です。

私もいくつか目標を決めましたが、今日はその中でも今年一番フォーカスしたいものについてお話します。
年末に、TEDTalkで非常に有名なブレネー・ブラウン(Brené Brown)の最新著書Daring Greatlyを読み、非常に感銘を受けました。少なくとも、この数年で読んだ本の中では、最も重要な本だと思います。日本語訳がいつ出るのかわかりませんが(注:翻訳版は「本当の勇気は「弱さ」を認めること」)、彼女のTEDトークはここで見れます。(日本語訳付き)

彼女は今では様々なカンファレンスに引っ張りだこのスピーカーで、北米では今更彼女の紹介をするまでも無いのですが、彼女の本職はテキサスの大学の研究者で、主に人間の弱さと恥について研究している人です。私は彼女のTEDトークを見てとても感動して、彼女のブログを読んだり彼女の本を読んだりしていましたが、この最新刊にはまさにうちのめされました。

彼女の話す「弱さ」—英語ではVulnerability(ヴァルネラビリティ)と言いますが—とは私たちが日常で生活して行く上で誰もが経験する、「不安感」や「もろさ」の事です。その弱さとは一体どういうことなのか、例をあげると:

—助けを求めること

—ノーということ

—自分のビジネスを立ち上げること

—夫や妻をセックスに誘うとき

—ガンにおかされた妻と遺言状の準備をすること

—子供を亡くした友人に電話をすること

—離婚後初めてのデート

—仕事をクビになること

—恋に落ちること

—彼氏を初めて親に紹介するとき

—怖がっていると認めること

—人のうわさ話をしている人をとめること

—許しを乞うとき

—新しいことを始めるとき

—3回の流産のあと また妊娠すること

—公共の場でエクササイズするとき

…きっと誰でも経験があると思います。私だって、パーティで知らない人ばかりの時、Vulnerableに感じます。学校で、授業について行けていないときに先生にあてられないかドキドキすること—それもヴァルネラビリティです。


ブレネーは、こういった弱さに勇気を出して立ち向かうことこそが、Wholehearted Livingへの近道だと言います。それでは、Wholeheartedとは一体どういうことでしょうか?
日本語に訳すると「心からの生き方」と言えるでしょうか。ブレネーによる、Wholehearted Livingのガイドの一部を紹介すると、
—他人がどう思うかを気にしないこと
—完璧であることに執着しないこと
—確かさを求めないこと
—人と比べないこと
—心配性を克服すること
—自分を疑わないこと
—自分をさらけだすこと

などだそうです。

本の内容についてはいくらスペースがあっても書ききれないので、是非本を読んでみてください。タイトルのDaring Greatly というのは、セオドア・ルーズベルトのスピーチから取ったそうで、ちょっと長いですが抜粋すると:
“It is not the critic who counts: not the man who points out how the strong man stumbles or where the doer of deeds could have done better. The credit belongs to the man who is actually in the arena, whose face is marred by dust and sweat and blood, who strives valiantly, who errs and comes up short again and again, because there is no effort without error or shortcoming, but who does actually strive to do the deeds; who knows great enthusiasms, the great devotions, who spends himself in a worthy cause; who at the best knows in the end, the triumph of high achievement, and who at the worst, if he fails, at least he fails while daring greatly…”

「重要なのは批評家ではない: 強い男がつまづいたことを指摘したり、もっと良くやれたはずだと言う人間ではない。称賛に値するのは実際にアリーナの中で、塵と汗と血で汚れた顔で勇敢に奮闘し、何度も何度も間違いを犯し、目標に及ばないものの—何故ならあらゆる努力は失敗と欠点無しにはあり得ないからだ—それでも行動を起こす人間である;熱心さと情熱を持ち合わせ、価値のある信念に自分を費やし—最良の場合には最後には勝利の達成を、そして最悪の場合には、少なくとも 勇敢に挑戦しながら失敗したと知っている。。。」

失敗しても、恥をかいても、それでも勇敢に挑戦する人間の方が、それを指差して批評したり笑ったりする人間よりもずっと「心から」生きている人間なのだ、というブレネーのこの本には、ある意味人生変わっちゃうくらい感銘を受けました。なので、私の2013年の目標の一つは「Practice Wholehearted Living – 心からの生き方を実践する」ということです。

まずはぜひ上のビデオを観てみてください。日本ではまだまだ人間の弱さに関する対話が少ないと思うので、このブログででも、ソーシャルメディア上でも、興味のある人と色々話せたら良いなと思います。