2018年良かった本その1 I’ll Be Gone In The Dark【1000冊紹介する-011】Day 2

2018年は、書くことも少なかったですが読んだ本も少なかった。。。ですが、数は少なかったものの数冊の良い本にも巡り会うことができました。今日はそのうちの一冊を紹介したいと思います。

I’ll Be Gone in The Dark by Michelle McNamara

北米ではいまTrue Crime(犯罪もの)というジャンルが本、ドキュメンタリー映画、ポッドキャストなどでものすごく流行っているのですが、私も去年あたりからMy Favorite Murderというポッドキャストにハマり、今年はライブショウにも行ったほどの大ファンです。ですが、True Crimeの最初の媒体ともいえる本に関してはほとんど読んでおらず、この本の著者のミシェル・マクナマラも全く知らなかったのですが、ポッドキャストで話題になっていたため、手にとることになりました。

アメリカ・カリフォルニアのサクラメント近郊で1974年から1986年までに起こった数々の強盗、レイプ、殺人事件は最初は空き巣事件として始まり、犯人にはVisalya Ransacker(Ransackとは漁り散らかすという意味)という異名がつきますが、徐々にその犯罪は、レイプ、そして殺人にまでエスカレートしていきます。この犯人は70年代から80年代にかけて少なくとも13の殺人、50人の女性をレイプそして100以上の強盗を働いたといわれ、サクラメントではイーストエリアレイピスト(EAR)、もしくはオリジナルナイトストーカー(ONS)とも呼ばれていました。2001年にDNA鑑定でEARとONSが同一人物ということが判明し、捜査官達はEAR/ONSという呼び方をしていました。しかしその後30年近く事件に進展はなく、コールドケース(未解決事件)になりかけていました。

この本の著者のミシェルはTrue Crimeファンで、True Crime Diaryというサイトの運営もしていました。ミシェルはこの犯人をカリフォルニア州の別名にちなんでゴールデンステートキラー(GSK)と命名し、独自のリサーチで捜査をすすめ、執筆にはげんでいました。この本のサブタイトルは ”One Woman’s Obsessive Search for the Golden State Killer“となっていますが、まさにミシェルが信じられない執念で30年以上前の事件の記録、証拠、当時の捜査員のコメントなどの膨大な資料をもとに、彼女自身の捜査をし、まとめたのがこの本です。非常に残念なことに、ミシェルは本の完成前に突然睡眠中に亡くなってしまうのですが、彼女の夫でコメディアンのパットン・オズワルド、ジャーナリストのビル・ジェンセン等の助けにより本は完成し、2018年2月に出版されました。

そしてさらに驚くべきことに、この本が出版された数ヶ月後に、ゴールデンステートキラーがサクラメントで逮捕されました。犯人は元警察官で73歳のジョセフ・ジェームス・ディアンジェロで、DNAの100%適合で犯人として逮捕され、現在裁判を待ってるところです。

GSKの捜査担当のポール・ホールズ氏は、生前からミシェルをまるで捜査の相棒のように信頼していて、お互いに情報交換をよくしていたと語っており、この本に書かれている捜査内容も、実際に警察でも参考にしていたとのこと。

この事件の捜査に個人でこれだけ時間を費やしたミシェルの執念もすごいですが、彼女は同時に非常に優れた書き手でもあり、読み物としてもとても満足できるものになっています。犯人に対する執念と同時に、犠牲者の人々への心配りも随所に表されていて、まさになんと惜しい死かと無念でなりません。

GSKに興味のある方は。ホールズ氏によるこの事件に関するオーディオブックEvil Has a Nameもありますので聴いてみてください。