このブログでは読んだ本を1000冊紹介するというプランを先日紹介しましたが、それとは別に、大好きな子供向け絵本の紹介も始めたいと思います。
我が家には二人の息子がいますが、(上は大学生、下は小学2年生)毎晩寝る前に絵本を読むのが習慣になっています。ずっとカナダで生活してきたので、読む本は99%英語の本です。
絵本って、なんだかわくわくしますよね。短いものがほとんどなのですぐ読めるし、絵が大きいし。なんといっても子供と一緒に読めるのがいい。
人ぞれぞれ好きな絵本は違ってくると思いますが、私が好きな絵本で欠かせないポイントは:
1)ストーリーが子供だましでなくしっかりしている
2)絵が美しい
の二つです。
基本的にここで紹介するのは英語の絵本ですが、邦訳版が出ている場合はご紹介します。
記念すべき第一回は、The Big Orange Splotです。
The Big Orange Splot by Daniel Manus Pinkwater
タイトルを直訳すると「大きなオレンジ色のしみ」です。
ストーリーはとある街のとある住宅街からはじまります。
主人公のプラムビーンさんは、全ての家がみんな同じ外見のストリートに住んでいました。そのストリートに住んでいる人達は、そのことをとても誇りに思っていました。”This is a neat street”(ここはこぎれいなストリートです)とみんな言っていました。
ところが、ある日何故かペンキ缶をくわえた鳥が、プラムビーンさんの家の屋根に缶を落としてしまい、屋根におおきなオレンジ色のしみをつくってしまいます。
プラムビーンさんの近所の人達は「大変だったね。すぐに屋根を塗り直さないと」と言いました。
ところがプラムビーンさんは「そうですね」と言ったものの、すぐに作業には取りかかりませんでした。プラムビーンさんは、オレンジ色のしみを、長いこと見つめていました。
ついに、近所の人達が「プラムビーンさん、お宅の屋根、早く塗り直してくれませんか」と言うようになりました。
“O.K.” と答えたプラムビーンさん。やっとペンキを買ってきて、夜のうちにペンキを塗り出しました。翌朝、近所の人達はプラムビーンさんの家をみてびっくり。
プラムビーンさんの家はまるで虹のようでした。ジャングルのようでもありました。何かが爆発したようでもありました。
オレンジのしみはそのままで、さらに小さいオレンジのしみやストライプ、ゾウやライオン、綺麗な女性、さらにスチームショベルの絵まで描かれていました。
近所の人達は大騒ぎ。「ついにプラムビーンも頭がおかしくなった!」
プラムビーンさんはご近所さんの騒ぎを気にもとめず、さらに大工用具まで購入します。
ついには椰子の木やハンモックも購入し、ハンモックでレモネードを飲んでいるプラムビーンさんに、近所の人達は激怒します。「これはあまりにも行き過ぎだ!」「ここはこぎれいなストリートだったのに!」「一体どういうつもりだ?」
プラムビーンさんはこう答えます。
「私の家は私であり私は私の家です。私が住みたい場所が私の家であり、すべての夢の象徴なのです。」
絶句した近所の人達は、プラムビーンさんの隣に住んでいる男性を、説得のために送り込みます。
男性はプラムビーンさんとレモネードを飲みながら一晩中話し合っていました。
そしてその翌日。。。
その男性の家はまるで船のような外見にすっかり変わっていました。
「私の家は私であり私は私の家です。私が住みたい場所が私の家であり、すべての夢の象徴なのです。」
最終的にはそのストリートの人達がひとりづつ個性的な家を作り出し、最後にはそのストリートすべてがすごい家ばかりになるのですが、みんな幸せ、というハッピーエンドなお話です。
この本は1977年に発行され、ヘタウマ風の絵がとても良い味をだしています。子供向けの絵本ですが、テーマは充分大人でも楽しめるものです。
プラムビーンさんが言う台詞の(日本語訳が難しいですが)
“My house is me and I am it. My house is where I like to be and it looks like all my dreams.” というのがこの本のテーマです。つまりそれぞれの個性を大切にしようということですが、みんな同じ外見の家を変えただけで近所の人達が激怒、というのは充分現在の社会でもありうることで、とても風刺が効いていると思います。
そもそもペンキ缶をくわえて飛んでいた鳥とか、ツッコミどころもあり、またみんなの個性的な家の絵も楽しい本です。
みんな同じで統制が取れていることを善とした時代、社会もありますが、私の子供達には、「じぶんらしさ」を大切にしてもらいたいなと実感させてくれる本です。
著者・絵:Daniel Manus Pinkwater
34ページ
対象年齢:4−8歳
邦訳版:無いみたいです。
これからもどんどん紹介していきますのでお楽しみに。