このブログでも何度もご紹介しているクリス・ギレボーの待望の新刊が出ました。日本語版のタイトルは未定ですが、原書のタイトルはThe Happiness of Pursuit。ちょっと前に、Pursuit of Happinessという映画がありましたが、これは「幸せの探求」ではなく、「探求の幸せ」といった意味ですね。
クリス・ギレボーは、World Domination Summit/世界征服サミットの仕掛け人、また$100 Startup/一万円起業の著者として日本では知られていると思いますが、それ以前に、北米では「世界中のすべての国に旅する」という偉業を成し遂げたヤツ、としても有名です。
世界中の国193カ国すべて回るのに、10年近くかかったそうですが、このHappiness of Pursuitでは、そのようなクエスト=探求/冒険について書かれています。
それでは、クエストの定義とは一体なんでしょうか?
クリスによると、以下のようになっています。
- クエストには具体的なゴールと明確な終了地点がある
- クエストには何らかの犠牲がともなわれる
- クエストは多くの場合使命感によって動かされる
- クエストには多くの小さなステップがあり少しづつゴールに向かって進む
例えば「ダイエット」「禁煙」「借金返済」などはすべてとても有意義なゴールではあるのですが、人生をかけて挑むクエストではないのでは、とクリスは書いています。
この本にはそれぞれのクエストに挑んだ人達の実例も沢山紹介されています。
トルコ、またアメリカ(!)を徒歩で横断した人達、世界を単独で航海した16歳の少女、1年間に250(!)のマラソンに挑戦した人、世界一巨大なオーケストラの演奏を実現した人、、、と書くとスケールの大きな挑戦ばかりのようですが、必ずしもそうではありません。
オクラホマ在住のSashaは、子供の頃海外で過ごした経験があるものの、今ではすっかりアメリカでの快適な生活に慣れきってしまっていました。娘にも世界の文化を知って欲しいという願いもあり、彼女は毎週、世界各国の料理を作る、というクエストに挑みます。
記念すべき最初の国はアフガニスタン、次はアルバニア、と、毎週それぞれの国の料理に関してリサーチをし、料理を作り、その国の音楽をかけながら時には友人を招いて食事を楽しむ、という形のSashaのクエストは、その後反響を呼び、同じようなクエストを始める人達もでてきました。
このように、自分の住んでいる街から一歩も外へでなくても、クエストは可能なのだ、とクリスは説いています。別の例では、編み物好きが高じて「帽子を1万個編む」というクエストに挑戦しているRobynも紹介されています。彼女のサイトでは、編み物の図案を紹介したり、編んだ帽子を寄付したりするプロジェクトも行っているようです。このように、自分一人で始めたクエストに、賛同者が集まり、コミュニティができていくことも珍しくはないようです。
感動的だったのは、韓国で英語を教えている時に知り合ったアダムとミーガン。二人はその後結婚するのですが、哀しいことに、ミーガンは病気で命を失います。悲しみにうちひしがれていたアダムですが、ミーガンが残した「人生でやり遂げたいことリスト」を、ミーガンの代わりに一つ一つ達成することを、彼自身のクエストとして始めます。ミーガンが行けなかったトロント・ブルージェイズの試合を観に行き、今までより真剣にランニングにも力を入れ、ミーガンの目標だったハーフ・マラソンも完走します。ゆっくりとではありますが、縫い物や編み物も習っているというのです。
このように、クエストに挑戦する人には、「人生は短いものなのだ」という意識がある人が多いとクリスは書いています。
また、インタビューをした多くの人達に共通していたのが「これをやらなかったら、絶対に後悔する」というフレーズが何度も登場したということ。アメリカを歩いて横断したNateは「クレイジーなアイデアなんだけど、実行するまで2年間どうしても頭から離れなかったんだ」と語っています。
この本の中には、そんなクエストに挑戦した人達(中には、失敗した人もいます)から学んだレッスン、そして同じようなクエストに出たい人のためのアイデアが沢山詰まっています。また、Dispatchと称したミニエッセイでは、クリス自身の旅の思い出、そして失敗談なども載っていて、十分に読み応えのある一冊です。
この本を読んで、私も、私のクエストは一体何なのか、思わずじっくり考えてしまいました。自分の本を出したいという夢はありますが、これは果たしてクエストと呼べるのか?まだその答えは見つかっていませんが、時間をかけて考えてみたいと思っています。
あなたのクエストは一体なんでしょうか? ぜひこの本を読んで考えてみて下さい。