「白人」への期待

私は、ブログや雑誌に記事を書いたり、翻訳や通訳をする他にも、留学エージェントの仕事をしています。ビクトリアに留学やワーキングホリデーでやってくる日本人の生徒さん達に、語学学校や住む場所(ホームステイやシェアハウス)を紹介するのが仕事です。

住む場所を探す時に、生徒さんにタバコを吸われるか、ホームステイ先に子どもやペットがいても良いかなどの希望を聞き、できるだけご希望にあった家庭をマッチングします。夏は日本からやってくる生徒さんが増えるにも関わらず、ホームステイ先の家庭は夏休みのバケーションなどを取るので、受け入れ可能な家庭の絶対数が減り、毎年夏はものすごく忙しくなります。

そんな中、昔から思っていたことですが、日本の生徒さんからの希望で、いつも言われる度にがっかりすることがあります。それは

「白人の家庭でお願いします。」

というものです。

カナダは移民の国です。アメリカが「人種のるつぼ」と言われるのに対して、カナダは「人種のモザイク」と呼ばれ、それぞれの自国の文化を捨てずに、カナダ社会に溶け込むことが可能です。チャイナタウンを始め、外国の文化をそのまま受け継いだ地域も沢山あります。

親が外国から移民としてやってきて、二世、三世のカナダ人として住んでいる人も多いです。そういった人々は見た目や家族のヘリテッジこそアジアやアフリカまたは南米の人のように見えるかも知れませんが、中身は完全にカナダ人です。

アメリカではトランプ大統領がイスラム教徒の米国入国を制限して話題になっていますが、カナダは、シリアを初めとした難民の受け入れには積極的ですし、実際に難民としてカナダ入りした家族も時折みかけます。

もちろん、高いお金をかけて留学やワーキングホリデーをするのに、何故英語になまりがあるような「外国人」の家にステイしなければいけないのか、というご意見はもっともですので、私の会社では、移民や、あまりにも英語にアクセントがありすぎる方の家庭、家庭内で使う言語が英語でないファミリーにはホストファミリーになることはご遠慮いただいています。

それでも、「白人」でないカナダ人もまだ沢山いらっしゃいます。タイ系カナダ人のホストマザーがいる家庭では、彼女の料理はとても美味しいといつも生徒さんから好評ですし、イラン人のホストマザーがいる家庭もあります。ブラジル系カナダ人で学校の先生をしているホストマザーもいますし、アフリカ系のホストもいます。みなさん、英語には全くなまりがありません。彼らはカナダで育った「カナダ人」だからです。

逆に「白人」でも、ヨーロッパやオーストラリアの人ですと、カナダの英語とは全く違ったアクセントがあり、聞き取れないことがあります。(ちなみに私が苦手なのはオーストラリアです。オージーの皆さん、ごめんなさい!)

日本は、平和で豊かな国で、そしてほぼ単一人種の国なので、外国人に対する無意識な差別が多いように思います。でも、旅行や留学などで海外に出ていったことがある方ならみなさんご存じかと思いますが、単一人種の国はどんどん減ってきており、「人種」というものの定義もこの数十年で大きく変わってきています。一昔前ならアメリカ人と日本人の子どものような人達は「ハーフ」という一言で簡単に片付けられていましたが(「ハーフ」に関する意見はまた別の機会に書くことにします。)最近では二つ以上の人種が混じった人も増え、それぞれがさらに子どもを作っていくと、「ガイジン」「ハーフ」などの概念で区別することができなくなってきています。ましてや肌の色で人を区別することは、すでに時代遅れの考えだと思いませんか。

お客様である生徒さんのご希望に関してこのようなことを書いても良いものか、少し悩みましたが、「苦情」ではなく、あくまで私の、そして弊社の考えとして読んでいただけたらと思います。

「白人の家庭でお願いします」と言ってこられる生徒さんのほぼ全員の方が本当に意味するとことは「英語に変ななまりがなく、家庭で英語を話しているカナダ人家庭でお願いします。」という意味だと信じています。そして、もしそういう家庭をご希望でしたら、もちろん喜んでホームステイの手配をさせていただきたいと思います。