【はみライ#124 日本語教育について&ゲイのステレオタイプと無意識の差別】

はみだし系ライフの歩きかた第124回:望月良浩さん

少しづつ、はみライのエピソードの文字起こしされたものを掲載して行っています。

今回のエピソードは2020年9月27日に配信された第124回「日本語教育について&ゲイのステレオタイプと無意識の差別」です。ゲストは日本語教師の望月良浩さんです。

文字起こしはバンクーバーのYakoさんがしてくださいました。

このエピソード、もっちーさんとのお話がすごく盛り上がって、長ーいエピソードになったのですが、Yakoさんの文字起こし、なんと36ページにも渡っておりました。本当にありがとうございました。

このエピソードでは後半に衝撃的なお話が出て来て、配信当時はかなり怒りの感想もいただきました。私も久しぶりに読み返してみて、楽しかったですが、配信して2年以上経った今でも、またちゃぶ台ひっくり返したいような怒りを思い出しました。もっちーさんのような思いをする人が少しでも減るように、アライとして声を上げていかなければいけないなと改めて思いました。

それでは、もっちーさんとのエピソードをお楽しみください。


This is はみだし系ライフの歩き方。I’m Yukari Peerless.

周りが決めた道からはみ出して、自分だけの生き方をする人を応援するPodcast、はみだし系ライフの歩き方。Welcom to episode 124。みなさんこんにちは。ピアレスゆかりです。

先週は、少し遅めの夏休み、ということで、はみライは1週間お休みをいただきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?こちらはですね、かなり秋めいてきました。もうすぐ10月ですのでハロウィンの話とかもちらほら出てきています。もう10月とか、ちょっと信じられないですね。それから先日ご紹介した、ブレネーブラウンブッククラブ。参加者の方もいい感じに集まってきました。Facebookでメンバー専用のグループも作って、今はみんな自己紹介をしたりしているところです。読む本は Daring Greatly。開始日は日本時間の10月10日の日曜日の朝からになっております。毎回のZoomには参加できないけども、録画されたものをみて、Facebookでのディスカッションに参加する、という方もいらっしゃいます。まぁ、人数的に多すぎず少なすぎず、丁度いい人数が、今、集まっていますけども、今週いっぱいまでは参加を受け付けておりますので、まだ申し込んでいないという方は是非ご連絡ください。

さて、今週のゲストは、ミシガン州で日本語教師をされている、望月良浩さんです。私はもっちーさんと呼ばせていただいているんですが、今週のエピソードはですね、これまでで一番長くなっていて、編集する前は1時間半位あったんですが、なんとか編集して、少し短くしてあります。日本語教育について、また、モデルマイノリティについて、LGBTQやゲイのステレオタイプについて、そして、ドラアグクイーンについて、とにかく盛りだくさんのエピソードですので、一気に聞く時間がないという方は是非何回かに分けて聞いてみてください。それでは早速、望月良浩さんとの会話をお楽しみください。

ゆかり:それでは今週のゲストは望月良浩さんです。どうぞよろしくお願いします。

望月良浩さん(以下望月):どうぞよろしくお願いします。

ゆかり:ではさっそくですけれど、自己紹介をお願いします。

望月:はい。望月良浩と申します。今、アメリカのミシガン州にあるミシガン大学という大学で日本語を教えております。アメリカも結構長いんですけれども、ちょうど今、日本と海外で暮らしたのが丁度半々くらいかなぁという感じのところなんですけれども。生い立ちを言うと、長くならないように気をつけますね(笑)子どもの頃はフィリピンにいて、その後日本に戻ってきて、子どもの頃ずっと鹿児島にいたんですけれども。それで大学で東京に出てきて、大学卒業後フランスに・・・ここ話すとくなるので割愛しますが、フランスに行こうって思い立ってフランスに行って、あまりフランスが性に合ってなくて、この国はちょっとダメかもしれないってなって、それで、それまでアメリカに全然興味なかったんですけど、アメリカっていう選択肢が急に出てきて、アメリカに大学院留学をしたら、意外に、すごく、水が合っていたというか、性に合っていたので、そのまま気がついたらズルズルと18年間、アメリカに住んでいるという感じですね。はじめはハワイにいて、その後テキサス、で、今ミシガン州のアナーバーというところに10年以上住んでいます。

ゆかり:なるほど。もうずっと海外、みたいな感じですよね?ほとんど、大人になってから。

望月:そうですね。大学生まで日本なので、それ以降ずっと外にいるので。考えてみれば大学生なんて、子どもみたいなものなので。あんまり日本の大人の社会を知らないなぁって、この間フっと思いました。

ゆかり:この間、うちのポッドキャストに出ていただいた幸さん・・・ツイッターでフォローされてるかな・・・わかんないんですけど、幸さんてポッドキャストされてる、彼女はサンノゼに住んでるんですけど、彼女も同じようなことをおっしゃっていて「大学を卒業した時にアメリカに来たから、日本の大人の社会を知らない」みたいな話をしていて。結構そういう人いるかも知れないですね。

望月:そうですね。だから、言語とかも、大学生までいたからそりゃ日本語がネイティブだろうって・・・まぁネイティブなんですけど、日本語が。でも大学生のボキャブラリーっていっても、大人になってから知るボキャブラリーもいっぱいあるので。アメリカに来てから初めて知った言葉とか概念とかは、辞書引かない限り、日本語でなんていうかわからないので、ある時ふと「あーこれって日本語でなんていうんだろう」って思うときもありますね。

ゆかり:おもしろい(笑)でも、日本語の先生なんですよね、もっちーさんは。すごいなぁ!

望月:はい(笑)そうなんです。

ゆかり:フランスはどのぐらいいらしたんですか?

望月:フランスは短かったですね。世の中は‥すごく人生思うように行かないなぁと思うのは、ほんとにフランスに住み始めた時はもう「自分は一生フランスで生きていくんだ」ぐらいの気持ちで。短期で訪れるのと、一生住もうと思うのでは持ってくるものって全然変わるじゃないですか?だからほんと役に立たないものばっかりすごい持ってきてて(笑)もう一生住もうと思ってたので。でも、フランスはけっこう移民に対してなかなかハードルがたかくて。結局カルトセジュールっていうんですけれども、滞在許可書、っていう最初のハードルがあって。それが私はちょっと取れなくて。結局4ヶ月ぐらいしかいなかったですね。

ゆかり:あ、そうなんだ・・・このポッドキャストはフランスのリスナーさんもいらっしゃるので。

望月:あ!はい・・・あんまり悪いことは言えないですね(笑)

ゆかり:いえいえ(笑)私も全然フランスとかわからないですけれど・・たまに聞きますよね・・外国人に厳しいみたいな・・もちろん、みんながみんなそうじゃないと思いますけど。

望月:そうですね。フランスに住んでいたのはほんの数ヶ月で、アメリカに住んでるのがもう18年ですけど、長さが全然違いますが・・住んでた環境も違うのであまり比べられないのかもしれませんが・・フランスに住んでたその短い間に、アジア人だから差別された経験が何回かあって。でも、アメリカで18年生きてて、そんなに目に見えた差別は受けたことがないので、それもフランス・・あんまり国を比べるのも良くないカナと思うんですけれども。フランスはやっぱり外国人に厳しいのかなぁという印象はありますね。なんだかんだ言って、アメリカとかカナダとか移民をベースに成り立ってきた国なので、やっぱり移民とか、外国人に対してみなさん慣れてる人が多いのかなって印象があります。

ゆかり:アナーバーって、サイズ的に大きい街なんですか?

望月:いえ、すごく小さい街で。人口自体は十万人ぐらいもいないと思いますね。だから大学関係者の方が街の人口より多いんです。

ゆかり:そうなんだ。大学の街なんですね。

望月:そうですね。ミシガン大学は結構大きい大学なので。大学の学生、スタッフ、教員合わせた人口は、たぶんアナーバー市の関係ない人口より多いんじゃないかなと思います。夏休みとか、人、全然居なくなって(笑)

ゆかり:がらんとしてるんだ(笑)私の住んでるとこも、大学の街なので、なんとなく感覚はわかりますけど。日本人は多いですか?ミシガン州全体では結構いると思いますけど。

望月:そうですね。やっぱりミシガン、オハイオ・・日本の企業、ミシガンにはトヨタがあって、オハイオにはホンダがあって、それ関係のサプライヤーの会社もたくさん来ているので、日本企業の駐在員の方がすごく多い州だと思います。ただ、大学に関して言えば、やっぱり言われていますけど、今、日本の若い人たちはあまり海外に留学しないので。特に学部生は、日本人留学生なんてほとんど居ないと思うし。日本人留学生といったらどうしても大学院生、ポスドク、企業派遣で研究に来ている人とかそういう人で、個人的に留学してる日本人学生っていうのは多分すごく少ないんじゃないかなと思います。

ビジネスマンは街に多いんですけど、大学には全然日本人はいない感じですね。

ゆかり:そういうものなんだ。大きい大学だから、いっぱいいそうなイメージがありますけどね・・日本人とか、留学生とか・・

望月:そうですね。もちろん、ファカルティとか、教員には多いと思うんですけれども。学部生はあまり。まぁ私が教えているのが日本語なので、それ関係でそもそも日本人には出会わないというのもあるのかもしれませんが。

ゆかり:あ、逆に出会わない。

望月:そうですね。日本語を日本人はとらない(笑)

ゆかり:確かにそれもそうだ(笑)

では、アメリカに来てから、日本語の先生になるまでの経緯を簡単に教えて下さい。

望月:最近Twitterで日本語教師になりたいって目指してる若い方達とよくつながるんですけど。なんかおもしろいのは、私の場合、最初から日本語教師になりたい、なろうと思って、日本語教師になったというわけではなく。実際、私よりそれ以上の年代だと、流れ流れて日本語教師になったって人が多いんじゃないかなと思うんですけど。私の場合は、まずアメリカの大学院に入るっていうのが先にあって。その時にどの学部に入るかって決める時に、日本では、私、日本文学を先行していたんですね。あまり深く考えずに・・日本だと学部で勉強していたことをそのまま大学院で勉強を続けるので・・あまり替えるって選択肢がなくて。後で気づいたのは、アメリカでは、けっこうみなさん学部と関係ないことを大学院で勉強してるみたいなので、替えられたんだなって後で思ったんですけど、当時知らなかったので。そのまま、アメリカで日本文学を研究するという、ちょっと面白いキャリアプランになったんですけど。アメリカで、その時、ハワイ大学にいたんですけども。ハワイ大学で日本文学を専攻して。ハワイ大学の日本文学科はすごく大きい学部で。日本語学Japanese linguistics とJapanese literatureが一つの学部の中に入っていたので、私は文学専攻だったけど、言語学のクラスをいくつかとって、そのうちに「日本語を教える」ていうのに興味を持ち始めて。ティーチングアシスタントのポジションが出たので「あぁじゃあちょっと日本語教えてみたいな」と思ってそのポジションに応募して。文学専攻だったっていうのがラッキーだったのは、やっぱり日本言語学を学習している学生がたくさんいて、彼らは、ものすごく日本語を教えたいのでもちろんそのポジションに応募するんですけど。日本文学を専攻している学生はもともと言語にはそんな興味ないので。応募している学生が少なかったので、競争率が低かったので、幸い日本語を教えるティーチングアシスタントのポジションを得ることが出来て、はじめてアメリカの大学ではじめて日本語ワンノーワン日本語の初級を教えることになりました。それがきっかけで、だんだん「ああ日本語教えるの面白いな」と思ってきて。自分は文学専攻でしたけど、で、MAはとったのですけれども。Ph.D始めたあたりから「文学の研究ってなんだろう」ってすごく思い始めて。文学を読むのは好きだし、それについて語るのも好きだけど「文学の研究ってなんだろう」ってすごく思い始めて。特にアメリカだと理論ベースで。理論っていうものにあまりついていけなくて。やはり大学は日本で教育を受けたので、日本の文学へのアプローチ、特に国文学という特殊なアプローチしか知らなかったので、アメリカの理論ベースの文学へのアプローチについていけなくなり始めて、だんだん現実逃避もあるのかもしれませんが「日本語を教えるのは楽しいなぁ」ってなってきて・・結局、その時、テキサス大学でPh.Dをやっていたんですけれども・・アドバイザーとちょっと仲も悪くなったし・・学問的な生活が行き詰まった時に「日本語教えてみようかな、プロフェッショナルとして」って思いついて。たまたまその年、色々募集が出てた大学に日本語を教えるポジションに応募して。幸い今、勤めているミシガン大学に雇われた、という経緯です。

ゆかり:日本語ねぇ・・難しいですよね。普通にしゃべってるけど、教えるのめちゃめちゃ難しい。この話も前ポッドキャストで出たんですけど、リスナーさんの中で。やっぱりうちのポッドキャストのリスナーさんは海外に住んでいる人とか、英語が好きな人とか、日本に住んでるけどパートナーさんが外国の人とか、そういう人がけっこう多くて。で、やっぱりそうなると、日本語を家族に教える・・そんなプロフェッショナルじゃないけど・・ここってどうなってるの?とかって聞かれるんですけど、答えられないことがめちゃめちゃ多いんですよ、やっぱり。日本人なのになんで自分でわかってないんだろうっていう・・その辺何かアドバイスとか、これはおすすめってリソースとかあります?このサイトはみておくといいよとか。

望月:あーあんまりそのへんを暴露すると、商売上がったりになってしまうので(笑)ネイティブスピーカーは自分の中にあるインナーグラマーとか、ネイティブイントゥイションとかいいますけど、感覚で話している部分があるので、いざそれを説明しろってなると難しいのは当然だと思うので、そのために、学問というのがあるので・・難しいというのは、わかります。リソースではないのですけれど、私が言語学の授業をとりはじめたときによくいわれたのは、いっぱい文型をつかった例文を自分で作ってみて、そこからなにか法則性を見つける・・どうしてこれはだめでどうしてこれはいいのか・・自分でたくさん例文を作って、何がオッケーで何がだめなのかっていうのをみると、自分でこういう理由でこういう風には言えないんじゃないかな、こういう理由でこういう風には言えるんじゃないかなってわかるんじゃないかなって思います。そうやって自分で理解したほうが教えやすいかなと思います、本で学ぶより。

ゆかり:なんでそうなるの?って言われても、やぁこうなるからこうなるんだよとしかいえないし・・(笑)逆に英語とかもそうで。私ももっちーさんと同じで、たぶん人生の半分・・海外で住んでいる時間のほうが、日本で過ごした時間より長くなって、だんだん英語が身についてくると、日本人で英語を学んでいる人から「この例文とこの例文どこが間違っているんですか?」どっちも意味が同じなんだけど、説明できないじゃないですか?”This is just how we say it.”ってしか説明できなくて。英語でもそうだから日本語でもたぶんそうなのかなって思うんですけど。うちの夫も全然真面目じゃないけど・・少しづつ日本語の勉強をしているんですけど。彼の一番フラストレイティングな問題としては、教科書で学ぶ日本語を、誰も日本の人は、そういう風に話さないってこと。

望月:まぁそれは英語でも同じ、どの言語でも同じかなと思うんですけれども。特に日本語の場合はですます系といわゆるタメ口系があって。ネイティブスピーカーは、まず家族の中でタメ口から話し始めて、小学生高学年から中学生くらいにかけて、ですますを覚えるって感じですよね、社会的Requirementとして(笑)でも、日本語を外国語として学習する場合はそれが反対の順序になるので・・まずですます系でずっと話して、途中からすこしづつ、タメ口・・砕けた話し方って教えてますけど・・砕けた話し方を練習して。でもやっぱりですますを最初に練習しているので、なかなかスイッチするのが・・日本人はスムーズに行ったり来たり出来ますけど・・まずフォームからして違うので、難しい。2つ違う言語があるっていっても過言ではないかもしれないですが、難しいですね。

ゆかり:そうだなぁ確かに。私ともっちーさんはTwitterで知り合ったんですけど。Twitterもけっこう日本語ができる外国人の人を私もフォローしているので。みなさん日本語を巧みに使ってツイートされてるんですけど。毎回思うのが・・カタカナ語はルール違反って気が(笑)私達が使ってるカタカナのスペルが外国人の人からすると「なんでそういうカタカナになるの」っていう・・このあいだ誰かがこの話、つぶやいていましたよね・・VとBが日本のカタカナだとビと(ヴィで)混ざっているから、外国の人がそれを頭で考えてスペルアウトする時にまちがっちゃうとか・・それはしょうがないだろうって気もしますけど・・日本語難しいなぁと思いますね。

望月:歴史が長いので、最初の頃のカタカナにしたルールと今のカタカナにするルールがちょっと違うので、古い言葉と新しい言葉でちょっと違いますよね。

ゆかり:このあいだ誰かが言っていたな・・たぶんMake upっていうときに、メイクと、長い線をいれたメークで、おかしいよねみたいな話を誰かTwitterの人としゃべっていて。でも、Cakeはケーキじゃないと気持ち悪い・・ケイクって言われたら違うって思っちゃう、日本人としては。英語の発音としてはケイク・・ケーキはケーキって言いたい。その辺やっぱり日本人としても矛盾しているし。難しいですよね。

望月:同じカタカナ、同じ英語から2種類の違うカタカナの言葉になっているものもいくつかありますしね。リリーフとレリーフとかね。

ゆかり:勉強する人、大変だなぁと思いますよ。

望月:カタカナは超上級くらいの人でも完璧にスペルアウトするのはなかなか難しいと思います。

ゆかり:そういう時は英語で書いちゃえって気がしますけどね(笑)

望月:あとはやっぱり、”てにをは”が難しいですね。

ゆかり:”てにをは”も、ルールがあるようでないような・・例外とかもいっぱいあるでしょう?

望月:そうですね。外国語として教える時は、一応ルールを教えて。助詞”てにおは”って一番難しいものの一つだと思うのですけど・・日本人が前置詞が苦手な様に・・

学生によっては「え?助詞って何が難しいんですか?全部ルール通りじゃないですか?」みたいなこと言う学生もいて。まぁたしかに、ほとんどルール通りなんですよ。時々例外はありますけど。日本的にルール通りなので。どうして難しいのかなぁって考えても、日本人も英語の前置詞難しいから同じことなのかなという気がしますね。

ゆかり:そうですね。たしかに。

望月:”は”と”が”は難しいですね。それは認めます。日本人でも時々、ここは”は”と”が”が違うなって思う時があります。ここは”は”じゃなくて”が”の方がいいなとか、ここは”が”じゃなくて”は”のほうがいいなって思うので。

ゆかり:その答えが出ない時・・どっちも使える時もあるでしょう?

望月:そうですね。意味の重きを置いている部分が変わるってことですよね、どちらでもいい場合は。

ゆかり:面白い。日本語の先生ってすごいって思いますね。どっちか選べって言われたら、私は英語の先生の方がラクな気がする(笑)

望月:私はバックグラウンドが違うので。専門的に学部から、大学院からキチッキチッと日本語言語学なり、日本語教育法なり、第二言語習得なりを勉強している人と比べると、やはり私はバックグラウンドが文学なので、知識量が違うので、時々恥ずかしくなることもあるんですけれども。幸いなのは、今の職場は多様なバックグラウンドを持つ人を雇おうというポリシーがディレクターにあったので。それも自分にとってはすごく幸いしたかなと思います。日本語教師は男性が少ないので、圧倒的に。男性だと有利ですね。希少価値が上がるので(笑)それも自分にとってラッキーだったなと思って。

ゆかり:希少価値(笑)マイノリティとして。

望月:男性でマイノリティになるっていう経験は、なかなか・・化粧品業界とか日本語業界くらいしかないんじゃないかなぁと思いますが(笑)

ゆかり:化粧品業界!確かに(笑)

ミシガン州ミッドウェストでは、マイノリティとして、嫌な思いしたことはあまりない?日本人として。

望月:それはラッキーと言えばラッキーだと思うのですが、なぜかというと、私はアメリカに来て18年間、アカデミアに所属しているので、必然的に大学のある都市に住むことが多く・・ホノルル、オースティン、アナーバーなので・・ホノルルは大学都市って感じでもないですけれど、もともとアジア人の多い場所ですし。アカデミックな風土のある場所で住んでいるので・・

ゆかり:educated peopleがいる環境・・

望月:そうですね(笑)そういう意味では、もともと有利な環境にいたというのもありますし。あとやっぱりアメリカでは・・カナダでもそうなんですかね・・あまりいいコンセプトではないですけれど、”model minority”っていう言葉があって。作られたコンセプトですけれども、アジア人は他のマイノリティと比べると、なんというんでしょうね・・

ゆかり:静かで礼儀正しくて勤勉で、というイメージがあるから。

望月:逆のステレオタイプがついているので。

ゆかり:そうそう、逆の意味での変な特権、みたいな感じで。

望月:そういうのもあるのかなっていうのを、さっきのフランスとアメリカを比べた話をある人にした時に言われましたね。ヨーロッパにはアジア人に対する”model minority”っていう考え方がないので、普通に差別されるんじゃないって(笑)

ゆかり:私は2018年くらいにカナダの日本語教育者の集まるカンファレンスが、私の住んでいる街の大学であって。私は日本語の先生ではないのですが、バンクーバー新報の記者として行ったんですよ。レポート書かなきゃいけないから。行ったらけっこう面白くて、なんだかんだ一日居座って、みんなのレクチャーとか聞いて、ディナーとかにも出してもらって。その時知り合った方とは今でもソーシャルメディアで繋がってますけれど。

望月:私はその学会は結構参加していて。そのビクトリアの年は行けなかったのですけれども。

ゆかり:来てたら会ってたかもしれないですよね!すごい!

望月:そうですね。会ってたかもしれませんね。僕、ミシガンなので、カナダが近いので。カナダの学会にもよくお邪魔していて。特に時々トロントとかであるときは「アメリカからはるばるようこそ。ありがとうございました!」とか言われるんですけど「いや、たぶんバンクーバーから来ている人より近い・・」とか思って。車で4時間位なので(笑)

ゆかり:カナダも広いしね。じゃあ、けっこう、北米の日本人教育者のネットワークって狭い世界なんですか?

望月:そうですね、狭いです。

ゆかり:いまビクトリア大学の日本語の先生は男性の方がいらっしゃって。私は奥様と・・奥様は日本語の先生ではないですけれど・・お友達で。パートナーさんが男性の方で。マサチューセッツで日本の大学で日本語を教えていたっておっしゃっていましたね。

望月:アムハーストとかですかね。

ゆかり:わざわざアメリカからカナダまで仕事代えていらしたんだって思って。そういうのって珍しくないのかなって、ちょっとよくわからないんですけれど。

望月:僕もカナダ、行けるもんなら行きたいですけれど。

ゆかり:ビクトリア大学、募集が出たら、ぜひぜひ来てください。

望月:初めてカナダに行った時に・・初めて行った時はカウントしないで・・アメリカに住み始めてからはじめてカナダに行った時、アメリカと比べて、アメリカですら「やっぱり日本と比べたら多様性に寛容だな」って思ってたんですけど、カナダに行ったら、もっと、アメリカ以上に多様性に寛容な国だなって思ってすごく感動して。「あ、なんか、アメリカじゃなくてカナダに住んだほうが、少なくともアジア人としては幸せに生きていけるのではないか」って思ったことを覚えています。

ゆかり:特にBC州、西の州は、アジア人がものすごく多いので。バンクーバーのあたりとか。住みやすい・・アメリカのカリフォルニアみたいな感じですよね。便利って言えば便利ですけど。

望月:この表現はあまりよくないかもしれないのですけれど、アジア系カナダ人が堂々として生きているというか、社会の同等な立場の一員として生きているなという印象をうけて。やっぱりアメリカのなかだと、いろいろな歴史、戦争の歴史とかもあるので、なんとなく、堂々と生きていないといったらすごい失礼なんですけれども、なんとなく、やっぱり人種差別の話とも関係するのかもしれませんが、マジョリティの白人のソサエティがあって、社会があって、そこになんとなくひっそりと生きているっていう感じがして。それは別に誰が悪いっていうか・・社会が悪いんですけれども。そういうのがあまりカナダには無いなっていう風に感じられて。それは観光客としていったからあまり深い深い部分まで見えなかったっていうのもあるのかもしれませんが。やっぱり自分の住んでいるところだと、より深い部分、より醜い部分が目に付きがちなので。

ゆかり:そうですね。

望月:特にエンターテイメントの業界とかで、アメリカは、アジア系・・日本に限らず、アジア系俳優、アジア系コメディアン、アジア系ミュージシャンすごく少ないなぁと思って。

ゆかり:確かに。

望月:もっともっと活躍してほしいなって。他人事ながら(笑)自分がそうなるつもりはないのに・・(笑)もっと頑張って!アジア系アメリカ人!とか思うんですけどね。

ゆかり:思いますね、確かに。

このあいだDMで「日本の学会でLGBTQの話をするんです」っていう話をされてたのが、気になったのですがどんな話だったのですか?差し支えない程度で。

望月:最近2回ほど、今コロナでオンライン開催になっているのですけれども・・2回ほど日本語の学会にキーノートスピーカーではなくラウンドテーブルのスピーカーみたいな感じで招待されました。ひとつは中西部の日本語教師会の集まりで、もうひとつはカナダのCAJLE・・カナダの日本語教師会の、今年はカンファレンスという形ではなく、オンライン勉強会みたいなかたちになったのですが、その2つに呼ばれて、その2つで大体同じような話をさせていただいたのですけれども・・タイトルとしては「性の多様性と日本語教育」というようなテーマで。あまりアカデミックな発表ではなかったのですけれども、自分の経験してきたことを元に・・特に日本語、今、学生にも教師にも・・自分も含めてですけれども、LGBTQの学生や教師も多いので、私も個人的に日本語の先生でゲイの方を何人も知っていますし、学生にもたくさんいるので。でも、そういうことがあまり表立って扱われていない印象があって。勉強会みたいな感じで、皆さんの意識を・・意識を高めるといったらすごく上から目線ですけれども(笑)・・たぶん知らない方も多いんじゃないかなと思ったので・・特にオンライン開催だと日本から参加できる方もいるのかなぁと思って・・アメリカとかカナダの方だともともとそういうことにある程度知識がある先生方が多いかなと思ったのですが・・広く色々な人にLGBTQにまつわる状況を知ってもらいたいなと思って。そういう個人的な経験をベースに色々お話して。学会なのでアカデミックな話をしたいなと最初思っていたのですが、準備をしている間に、だんだん「もうちょっと個人的なアプローチで訴えたほうが、みなさんのこころに響くのかもしれない」と思って、色々考えた末にテーマとして「どういう言葉、言動や出来事が、LGBTQ当事者を悲しませたり、怒らせたり、苛立たせたりするのか」という話を、自分が経験してきたことを元に話した、という感じですね。それに関連してキーワードは、”無意識の差別”ということと、”周縁化(marginalization)”と”マイクロアグレッション”について話した感じです。

ゆかり:それも、うちのポッドキャストでもちょっと前に話したんですけど、それは人種差別に関してのマイクロアグレッションでしたけれど、でも、LGBTQでもありますよね、けっこう。

望月:はい。結局同じ構造ですからね、差別というのは。マジョリティからマイノリティへの抑圧、なので。たぶん・・どうなんでしょう・・最近Twitterとかみてるとすごく意識的に差別している人もたくさんいるみたいな感じですが・・

ゆかり:そうなんですか?!

望月:そう思いません?

ゆかり:意識的な差別・・

望月:意識的な差別は誰しもが悪いと思ってると思うのですけれど、やっぱり本当にやっかいなのは無意識の差別であって。特に個人的な経験ですと、よくいると思いますが「私は別にゲイの人とか差別しないし、友達にもゲイの人いっぱいいるし〜blah blah blah〜」とか言ってて、そういうこと言う人に限って意外と・・限ってと意外とが矛盾していますが・・そういう人に限って、ふとした時にものすごくゲイ差別的な発言とか言動があって。本人は自分はすごく理解が深いと思っているので、それを指摘すると「あなたは何を言っているの?!私はこんなにゲイに理解があって、いつもゲイを差別しないって言ってるのに、そんな私を差別的だっていうの?!」みたいにすごく反発されることがあって。そういうパターンのほうが、実際は明示的に差別してくる人より多いし・・

ゆかり:疲れるでしょう?

望月:疲れるかなって思いますね。そこで、反発する人とか、なるべく考えないようにして・・それはたぶん自分の防御システムだと思うんですけれど・・笑って流す人とか、そこで話し合って啓蒙しようと思う人とか、いろいろな反応があると思うのですけど。結局疲れるので・・反発とかもあるので・・だんだん多くの人はちょっと諦めにも似た形で、無視・・心のチクチクを無視したままなにもなかったかのように関係を続けていくんじゃない

かなと思います。

ゆかり:それはいかん。んーなんなんですかね?そういう人たち・・(笑い)

望月:(笑)ちょっと思ったのは・・だから私は人生において、ずっと中学生、高校生ぐらいから、日本人のゲイとしてはオープンリーゲイで、ちょっといじられるくらいはありましたけれど、それで深刻にいじめられたり、嫌な思いになったってことはなかったんですけども。でも、大人になってから、最近すごくいやなことがあって・・ゲイであることで差別的な扱いをうけたことがあって。「え?今更?若いときはなかったのに。こんな人生の後半戦がはじまってから、今更こんな扱いを受けるんだ」と思って、びっくりしたのは・・私、望月良浩って人間があって。たぶん彼らにとっては、まず友達である望月、同僚である望月、仲がいい人である望月、っていうのがまず最初にあって、たまたまその人がゲイであった。で、友達だから、ゲイである部分はちょっと許してあげよう、みなかったことにしてあげよう、無視して付き合ってあげようっていう風になってるのかなって気がして。いざゲイである望月が前面に出てきた瞬間に、そこは本性が出るというか、「ちょっとやめて」みたいな。「友達だよね。ゲイであるあなたと友達なんじゃなくて、あなたと友達であって、そのあなたがたまたまゲイだっただけなんだよ」みたいな・・すごく突き詰めると、そういう反応だったのかなって思わせられました。

ゆかり:そういうのって男性からのほうが多いんですか?

望月:あーーーんーーー男性か女性かって比べて考えたことはないのですが。サンプル数が少ないのでなんとも言えないですね・・女性の方が多いかなぁ。

ゆかり:そうなんですか。なんで、女性はゲイが嫌いなんだろう?自分が好意の対象にならないっていうのがムカつくのかなぁ。

望月:(笑)

ゆかり:ほんとにわかんない、私。ぶっちゃけた言い方しちゃうと、あなたに関係ないからほっとけばいいのに、みたいに思うんだけど、私はね。

望月:そうですね・・その辺は複雑な関係があって。よく言われているのは、女性の方がゲイに対して理解が深いってよく言われるじゃないですか。私も、女の友達にはじめてカミングアウトしたっていうゲイの人が多いんじゃないかなって思うんですけど、女性の方が理解が深いっていう印象がありますが、が!(笑)それは本当に理解なのかなって思う時がありますね。

ゆかり:けっこう上辺だけっぽい感じ?・・変なステレオタイプもあるでしょう?flamboyantのゲイで「She like,she is my girlfriend!」なんていってアァ〜ってやってるのを見ると、ほんとに親友なら別にいいんだけど、なんかこの人達ファッションとしてやってない?みたいな人達もいるし。

望月:ありますねぇ(笑)そうですね、どうしても特に日本の・・日本だけじゃないですかね・・メディアで扱われるゲイっていうのがどうしても、ファッショナブルで、男性女性両方の視点を持ってて、人生の達人みたいなアドバイスをあげられる人で、そういう・・好意的差別ですけどね。

ゆかり:そういうキャラってことになってるのが多いから・・わかるわかる。

望月:あとは、見世物的に扱われるのがすごくいやですね。どうしても日本のメディアでは今ですらどうしても、この間のポッドキャストの回でも”オネエキャラ”みたいな話も出ましたけど。

ゆかり:私すごいあの”オネエ”って言葉が嫌いなんですけど。なんかすごい苦手。”オネエキャラ”とトランスジェンダーの人たちをごっちゃにしてる、みたいな。

望月:ゲイもごっちゃになってますよね。ゲイってああいう女性っぽい人のことを指すんでしょう?っていうステレオタイプがあって。でも定義的なゲイは男性として男性が好きな人なので。自分は全然男性だと思っているし、自分が女だから男性が好きなわけではなく、自分は男性で、でも男性だけど男性が好き、だから男性的な人が好きだし、男ですね。これは多くのゲイの矛盾なのかもしれないのですけれど、ゲイである時点でどこかしら女性的な部分があるのですけれども、多くのゲイは男性が好きなので、男性的な人が好き。でも多くの人はちょっと女性的って・・そういう矛盾がある(笑)

ゆかり:それはもう誰にも解決できないミステリーというか。私もLGBTQのコミュニティに入っていない外に立っている人としてみてて、なんでだろうってやっぱり疑問に思うし、別に誰か説明しろっていうのじゃないけど・・そういうのを語る学問もあるでしょう?そういうのは専門の人達に話してもらうってことにして(笑)

望月:(笑)私もこういう問題に興味をもちはじめたのはけっこう最近で。ずっと思ってたのは、やっぱり私はティーンエイジャーの時とか若い頃にあまりゲイであることで嫌な思いをしたことがなかったので。どうしても、そうすると、そこに問題があるってことを見過ごしてしまって。あまりこういう問題について考える機会がなくて。アメリカに来てからですね、特にミシガンに来てから。たまたま駐在の仲の良い友達が出来て。彼は同性カップルが居て。でも日本では同性婚認められていないので、パートナーを日本からビザ無しで居られるギリギリまでずっと居させて、それが切れそうになったら日本に帰して、また戻ってこられる様になったら来させて、またギリギリになったら帰して・・ってそういう生活をしてて。入国するときも「あなたはなんでこんな頻繁にアメリカに来てるんだ」って話にもなるし、疑われるし、すごく大変そうで、やっぱり同性婚ていうのは必要だな。これが男女の夫婦だったらこんな問題は全然起きなかったわけで。これをきっかけに、日本の同性婚について考えるようになりましたね。

ゆかり:偶然ですけど、私もFacebookでカナダ在住の日本人のグループっていうのがあって。個人情報だからあまり言えないけれど、そこに相談してきた人も日本人の人で。今、同性のパートナー・・パートナーは何人かわからないけど・・とカナダに住んでるけど、合わない・・日本人が外国に住むって、文化の違いとかあるから・・日本に二人で住めるんだったらもちろん日本に住んでるんだけど、それが出来ないからわざわざカナダに来たんだけど、来て何年か経って住んでるけど、ちょっと文化の壁とかがあって難しいなぁみたいな相談をされてる人がいて。あぁ確かに、日本でそれができるならすべて解決するのに。それが出来ないから外国に住むっていう選択をした人も、けっこういっぱいいると思うんですよね。

望月:そうやって優秀な人材を日本はどんどん失っていくんですよね。

ゆかり:どんどん外に出ていっちゃう・・ほんとそうです。

話がどんどん盛り上がって来てますけど、私がどうしてもこのエピソードに入れたかったのは、やっぱりドラァグレースですよ(笑)

望月:(笑)

ゆかり:私ともっちーさんはずっとツイッターのDMで「今週観た?!」って(笑)説明すると、もともとは「ルポールのドラァグレース」っていうリアリティ番組がアメリカで・・もうシーズン10ぐらいいってるでしょう?

望月:シーズン12ですね。

ゆかり:そうそう、昔からやってる・・

望月:私シーズン2から観てますもん。

ゆかり:すごい。私、ケーブルテレビに入ってないので、Netflixとかだけなので、そういう番組があるっていうのは知ってるけど全然観てなくて。興味がないっていうか、自分のレーダーの外、だったんだけども。今回始めてカナダのドラァグレースっていう、そのカナダ版が・・予算は結構低いっぽいですけど・・このあいだあって。私がたまたま知っている、ビクトリアのドラァグクィーンのJimbo君が出たので、ずっと応援して観てたら、で、もっちーさんも観てたので、二人で毎週「今週どう思った?」ってRecapを二人でやってて。

望月:私もJimboさん”推し”だったので、残念でした。

ゆかり:ね、いい人でしょう?めちゃめちゃ。

望月:自分の世界がすごく確立している人でしたね。

ゆかり:そう、”アーティスト”っていう感じ?デザインとかファッションとかスタイルがすごい好きな人なんで。まぁネタバレすると、もう終わっちゃったからね、シーズンは・・ジンボー君は最後の4人で落ちちゃった。

望月:トップ4でしたね。絶対トップ3に入れると思ってたんですけど、実力的には。

ゆかり:今回私ははじめてみたけど、面白かった。

望月:ほんとですか?是非アメリカの方も全部観てください。

ゆかり:実はNetflixでルポールのシーズン1の、今、15分ぐらい観たところ。

望月:あぁ、シーズン1は無かったことにしてください(笑)

ゆかり:そうなんだ!?だめなの?!

望月:ルポールファンの中でもインナージョークになってるんですけど。シーズン1は無かったことにしようって(笑)

ゆかり:え?!じゃあ観ないほうがいいの?飛ばしたほうがいい?!

望月:観ないほうがいいは・・とりあえず、もし全部見るんだったらもちろん1から全部観たほうがいいですけど

ゆかり:最初から全部観ようかなと思って、暇な時に。

望月:全部みるんだったら、1からずーっと観て下さっても構わないと思いますが、選んで観るんだったら私のおすすめはシーズン4,5,6ですね。シーズン4,5,6が全盛期だったかなって思って。そのシーズン4,5,6の人たちが出てたオールスターが、オールスターのシーズン2なので。オリジナルのシーズン4,5,6とオールスターのシーズン2。これだけはマストです!

ゆかり:すごい!詳しい!

望月:4シーズン位しか観られない人は。

ゆかり:ドラァグクィーンの世界もめちゃめちゃ面白い。

望月:そうですね。

ゆかり:女の私が観てても、すごいメイクの仕方だし。もちろんオーバー・ザ・トップでやるっていうのが、It’s a thing.だから。私も地元でシアター関係のコミュニティに入ってたりするので。クィアシアターフェスティバルとかもあるんですよ、ビクトリアで。その運営をする劇団の理事に入ってたから、色々知り合いとかもいるし。自分がゲイバーみたいなところに行ってみたことは無いんだけど、シアターフェスティバルの一環として、ドラァグ‥キャバレーみたいなのがあって、そういうので何回かみたことがあるんですよ。だから何人か知ってるドラァグクイーンの人がいるんだけど。で、何も知らずに行って、みんなすごい格好してワーって踊ってて、最初にみたのは、誰かが出てきてリップシンクをやるわけですよ。口パクで歌う。初めてみた時に「あ、歌ってない、あ、これは口パクなんだ」って思ってみてて、ワーって拍手して終わりました、で、次出てきた人も、別の演目で、その人もリップシンクで「ドラァグクィーンの世界ではみんなリップシンクをするものらしい」って。そういうものなんですね、そういう文化なんだ?

望月:そういう文化なんでしょうね。そんなに詳しいわけではないですが(笑)

ゆかり:ルポールのドラァグレースでもみんなリップシンクさせられてたし。すごい面白いなって思った。なんでって。

望月:やっぱり女性の曲が多いけど、男性だから高い声はでないので、リップシンクなんじゃないですかね。

ゆかり:なるほどね。メイクして歌うのも大変でしょう?みんな。

望月:僕はあんな高いヒールをはいて、すごいアクロバティックなことするのすごいなって。時々バックスプリットしたり。

ゆかり:脚スプレッドしたり、あれはもう芸術の域に達してるし、一部の人はほんとに。何回も私言ったけど、カナダのドラァグレースで司会してたブルックリンハイツ、あの人、女性みたいに綺麗やん。なんかそういう言い方も変だけど。

望月:そうですね(笑)

ゆかり:彼女はもともとバックグラウンドが、ダンサーなんでしょう?

望月:バレエでしたっけ?

ゆかり:ほんとに基礎ができてる、身体の動きからして、普通のその辺の女性よりしなやかな動きができる人が、すごいメイクをして。一日中観てられるっておもった、ブルックリンハイツ。しゃべりもうまいし。

望月:そうですね。出たシーズンでも安定してましたね。途中まで全然レベル違うので、余裕でしたね。

ゆかり:みなさん、知らない人はブルックリンハイツ、チェックしてみてください。もうめちゃめちゃ綺麗だし、ジョークも面白いし。

望月:そうですね。でもね、ああいう人はね、ずーっと12シーズン全部観てると、あぁいう人は最後まで残るけど優勝はしないだろうなっていう・・逆のこころの安心が(笑)

ゆかり:前回、ブルックリンハイツは優勝しなかったんでしょう?で、その一位になった人はどういう人だったんですか?全然知らないけど。

望月:えーと、番組の対策と傾向として、ちょっと変わってる・・あんまりオーソドックスな、今までの王道系じゃないドラァグクイーンの人は若干有利かなと思います。そういう人が勝つシーズンが何回かあったので。ブルックリンハイツに勝った人はそういう人でしたね。あまり王道・・人によってはこんなのドラァグじゃないっていうような・・ちょっとJimboにも似てる感じがしますよね。Jimboはそういうタイプだったので・・Jimboさんは、たぶんアメリカの方のドラァグレースに出てたら絶対トップ3には残ったし、もしかしたら優勝もできたんじゃないかな。

ゆかり:へぇ!だって正直に言っちゃうと、Jimboはドラァグというより、あの人はクラウンが本当は好きな人でしょう?だってカナダのやつは、ブリアンカが勝って・・なんか・・応援するけど・・マイノリティとしてマイノリティが勝ったのはもちろん嬉しいけど、ドラァグクィーンとしてはどうなんだろうかなぁっとは思った。

望月:私も、彼と一緒にシーズン3くらいからずっと観てるんですけど。もちろんアメリカの本家ドラァグレースの方も、多分シナリオがあって、プロデューサーの意向の通りいろんなことが決まってると思うんですが、それをうまく隠して、本当にリアリティTVであるかのようにプレゼンテーションしてると思うんですよ。でもカナダはそれが下手だった(笑)

ゆかり:(笑)もうね、予算の桁が違うから、カナダは。

望月:明らかにブリアンカが贔屓されてるっていうのがすごくバレバレの編集だったし。編集次第でどうにかなると思うんですよ。ブリアンカが上手にやってるとこだけ映して、下手なところは全部カットするとか。で、もう一人の人の下手なところだけ映すとか。

ゆかり:なんか人の文句言ってるところを撮って、ドラマを映したりね(笑)

望月:(笑)そう、だから明らかにブリアンカを勝たせようっていうのが・・3回ぐらい見えて、もうちょっと上手くやろう、って思いました。

ゆかり:(笑)まぁシーズン1だったからね。次頑張ってって感じ。おもしろかった。それではですね・・気がついたら1時間位喋ってるけど(笑)

望月:大丈夫です(笑)

ゆかり:質問コーナーに移ります。これまでで直面したもっとも大きな試練はなんでしたか?そしてそれをどうやって乗り越えましたか?

望月:はい。これを今日、是非このポッドキャストで話したいなと思ってたんですが、長くならないように頑張って短くまとめます。何人かの日本語の教師と一緒に、日本語の初級教科書を書いてたんですね、何年か前まで。私は・・根底にあるのは、「今までなかった新しい日本語の教科書を作りたい」っていうのがあって。もちろん自分がゲイであるっていうことが一番大きかったんですけど。それプラス「新しいものを作りたい」っていう思いがあったので、教科書の中に、日本語の教科書って・・英語の教科書でもそうですけど・・ストーリーとかキャラクターとかあるんですが・・LGBTQのキャラクターを入れたいって、他の著者たちに相談したんですね。それで・・著者たちを説得するのもなかなか大変だったのですが・・まぁなんとか著者たちを説得して、そういうなかで一人、レズビアンのキャラクターを入れて話を作っていったのですが。ある段階で出版社の方から「ちょっとそれは困る」みたいな話になって。

ゆかり:えー!

望月:日本の出版社なのですけれども。「それはこまる、これはちょっとこまる」(笑)

ゆかり:WHAT?

望月:理由が・・理由を聞いた最初の時は「ん−まぁ納得かな」って思ったんですよ。私ちょっと時々頭の回転遅いので。でも後でよくよく考えてみたら、なんていうんでしょうね・・つつきどころがある、突っ込みどころがいっぱいある理由だったんですけど。理由は「その教科書は世界中で売りたい」だから、例えばアラブの国のように同性愛が禁止されている国では、売れなかったり発禁にされてしまったりするかもしれない、だからコレは困るっていう話だったんですね。その時は「あ、そうか」って思ったんですけど・・私もアホだから(笑)でも後で考えたらえーでもそれって、例えば話の中には、他にもアラブ系の国ではタブーだとされている事柄がいっぱい出てきていて・・例えば未婚の男女がひとつ屋根の下で暮らしてシェアハウスをしてるとか、お酒を飲むシーンがあるであるとか、肉食であるとか、未婚の女性が自分の自我があって、ヴォイスや意見があって、なんなら車も運転したりとか、そういう他のアラブ系の国でタブーとなってることが他にもたくさんあるのに、なぜゲイの部分だけ取り上げてコレはだめですよ、っていうのか

ゆかり:するどい

望月:やっぱり差別ではないですか?その辺、他の著者も出版社も「これは差別ではなく、ビジネス的な理由なんですよ」とか言ってたけど。そこでLGBTQの一種だけをとりたてて、特別扱いして、ないものとしてしまうのは、明らかに差別だなと僕は思って。その事件自体も凄くショックだったのですけど・・私もまだ出版てものを、ちゃんとした出版ていうのをしたことがなかったので、私にとってはじめての出版になる予定だったので、その機会を奪われたっていうのもすごくショックでしたが、それ以上に、一緒に本を書いていた著者たちが、仲間たちが、誰一人として私のために立ち上がってくれなかった、という事実がすごく一番ショックだった。

ゆかり:それは辛い

望月:私に人望が無かったっていうのも一番の問題なのかもしれませんが(笑)

ゆかり:いやいやいやいや・・

望月:たとえば、私の理想としては「や、それは困る。望月さんが居なかったらこのプロジェクトはうまくいかない。どうか出版社さん、考えを改めてくれ」みたいなことを言う人が一人か二人ぐらい居ても良かったんじゃないかなと思うのですけど、そんなことは全く起こらず。色々な理由があると思うんですけども。一つの理由としては、著者の人たちも「望月さんがLGBTQのトピックとかキャラクター入れたいって言ってるから、あの人声大きいから、私達もしぶしぶ承諾したけど。正直言うと入れたくないんだよね。こういう機会が起こって良かったわ」ぐらいに思ってるんじゃないかなって。ちょっとうがった見方かもしれないですけど。そんなことも考えたりしました。

ゆかり:まぁ、考えちゃいますよね。

望月:で、それをどうやって乗り越えたかなんですけど。正直あんまり乗り越えられてませんね、まだ(笑)

ゆかり:結局その部分だけは取り消されたっていうか、入れないことになったんだ。

望月:あ。大事なところを忘れてました。それで、私、クビになったんですよ。

ゆかり:(!!!)そのプロジェクトから?!

望月:そうなんです。その時たまたま私は日本に居たので出版社に行って、編集者と責任者と三人で話して、なぜ、これが大事なのか、日本語の学生にはLGBTQの当事者がたくさんいて、先生にもたくさんいて、教科書は現実の世界を反映するものであるならば、LGBTQの登場人物が出ない教科書というのは、まず現実をちゃんとうつしてないし、それ以前に、LGBTQの当事者たちがこの世に居ないものだとしてmarginalizeしてるわけですよね、無いものとして扱ってるから、それは良くない。だからLGBTQのキャラクターを入れることには意義があって、なおかつ今までそういう日本語の教科書はなかったから、もしこれが出版されたら歴史に残る教科書になるって、説得したんですけど。あんまり取り付く島もなく。アメリカに帰ってきてから、メールで著者全員に通達があって「望月さんはあんまりチームプレイが出来ない人みたいなので、このプロジェクトからは外れてもらいます」っていうことになって、外れてしまったんです。

ゆかり:そのことに関しても誰も何も言わなかったんですか?

望月:はい。ちょっとさっきと話が前後してしまって申し訳ないですけども。それで誰も立ち上がってくれなかったので、すごくショックだった。

ゆかり:それはショックでしょう。いや、なんか、私、その話知ってたら絶対みんなに言ってたと思う。

望月:そうですね、守秘義務があったので、あんまり話せなかったですが。もうかなり長い年月が経ったので、もういいかな。

ゆかり:時効ってことで。

望月:もういいかなぁ。まぁ3年ですけどね、まだ、2017年に起きた事件なので。

ゆかり:今でもやっぱりそういう風に考える人がまだいるんですね、日本には。

望月:私も結局深いところで日本人だなって思ったのは、多分僕がアメリカ人だったら、普通にこれ出版社とか周りの著者とか訴えて(笑)何かしら出来たかなと思うんですけど、やっぱり深い部分で日本人なので、まぁあんまり訴えたところで訴えて僕は何したいんだろう、もう一回著者に戻してもらったとしても、こんなギクシャクしたなかで一緒に働けるのかなっていうのもあるし、もうどうしようもないですよね。だから結局僕はそれに対してなんのアクションも起こさなかったんですけど。アメリカ人だったら絶対何かしら起こしてるかなって思いました。

ゆかり:うん、絶対あると思う。じゃあ、このポッドキャストを聞いている人で、出版社の人が居たら「新しい日本語の教科書」を出してください。もっちーさんと一緒に、是非。

望月:最近Twitterでつながった方で、今、ジャパンファウンデーションが出してる「まるごと」っていう日本語の教科書があるんですけど。それは何年か前に出たんですが。出たときから私は新しい教科書だなって思ってて、こういう風に今までになかったアプローチで、教科書をつくりたい、あっちのほうが先に出たので、思ってたんですけど。最近Twitterでまるごとの著者の方と知り合うきっかけがあって、色々お話させていただいたら、まるごとには同性カップルであることを、明示的には言っていないんですけど、示唆させる「相方」って言葉をつかってるキャラクターがいて。だから「まるごと」には出てるんですよ、同性カップルが。教科書自体では暗示的な扱いなんですけど、教師用指導書のほうで、場面で出てくる「相方」と言ってるキャラクターは同性カップルであるということは明示的、教師用指導書には出てるらしいので。だからあるんですよ、一応。日本語の教科書でも同性カップルが出てくる本。だから、先を越されてました、いずれにせよ(笑)

ゆかり:(笑)いやいや・・でもねこれほんと、大事だと思うんですよ。リプリゼンテーションの話はポッドキャストで前にどっかでしゃべってますけど。ホント大事だと思うし、多様な人を色んな所にリプリゼントさせるのってめちゃめちゃ大事だと思うんですよ。で、Representation Mattersって、言うのは簡単なんだけど、たとえばそういうLGBTQの人をテレビでみたりとか、ドラマとか映画に出てくる、さっき言ってたアジア人のコメディアンとか、アジア人の・・日本人の俳優とか日本人のなんとか、出てくると、Makes big difference…日本語がでてこないけど、すっごい大事だと思うんですよ。私、だからテーブル叩きたくなる、大事大事!熱く語りたくなるけど。でも2020年だからね。

望月:そう2020年ですよ。この話が出たときに、まるごとはもうすでに出版されてたので。よく言われてたのは、そうやって望月さんみたいに、いろいろなバックグラウンドの多様性をリプリゼントさせる、みたいな考え方をしてたら、まるごとみたいに登場人物がいっぱいいすぎてわけわかんない教科書になるとか言ってて。「わけわかんない・・まるごとは素晴らしい教科書だよ」って。まるごとはそうやって、バックグラウンド違うキャラクターがたくさん出てくる教科書なので。

ゆかり:すばらしい。日本語を勉強している人はそれを使って勉強してください。

望月:そうですね。特に自分で勉強してる人とか、個人で教えている人には使いやすい教科書なんじゃないかなと思います。まるごとから別にお金もらってるわけじゃないんですけどね(笑)でも、個人的に。

ゆかり:今度そういうことあったら、Twitterで炎上させましょう。Twitterって、最近、そのためにあるような気がしてきて(笑)

望月:(笑)自分にダメージしかないような気がしてるから。

ゆかり:それもそう。これもポッドキャストのテーマみたいなんだけど。そういうので声を上げるのって・・結局声をあげてもなんの得にもならないんだけど。

望月:そう、潰されるじゃないですか。だから勇気がある人達はすごいなって。伊藤詩織さんとか大阪なおみさんとか。

ゆかり:そう。ほんとに勇気がある人。伊藤詩織さんとか、全然彼女にメリットない。裁判に勝ったから何?って思う。だけど、彼女のやったことにはものすごく意味があるし。そういう人に私はなろうって、日々頑張ってるんですけど。やぁそれは私だったら眠れないくらい頭にくる。

望月:当時は眠れないくらい頭に来ましたよ。

ゆかり:それはそうでしょう。今ここでぶちまけてくれてありがとうございます。

望月:いつか、乗り越える。3年間まだ乗り越えられてないような気がしますが、ずっと落ち込んでるっていえば落ち込んでるので。でも乗り越える術としては、僕、若い頃からずっと小説家になりたいなって夢があって。もうアメリカに来てしまったし、英語で小説を書こうかなと思って。小説になるのかメモワール的なものになるのかわからないですけれども。今回の事件のこととかも入れて、小説なり、メモワールなり書いて、発表できたら、それが自分にとってスィートリベンジになるのかな、って感じがしますね。

ゆかり:書いてください、読みたい読みたい。それ、すごくわかります。私もライターって自分で言ってるけど・・本出してないけどさ(笑)私もなんか書きたい書こうか書くべきなのかっていうのがあって。まだ何を書けば良いのか自分ではわかってないんですけど。で、日本で書くか英語で書くかっていうのもあるけど。やっぱりトピックがある、書きたいことがある、だったらそれは書けってことだと思うんですよね。もっちーさん読まれたかどうかわかんないけど「パチンコ」って、私が最近今あちこちで絶賛している・・で、あれも結局、ほんとに起こったことじゃないと思いますけど。過去のトラウマを、ある意味書いて消化しているような。それこそまさにさっきのそういうリプリゼンテーションの話だけど、もっちーさんみたいな人も絶対いっぱいいると思うんだよね・・潰された人が、どこかで。だから書くべきだと思います。私のいち個人のいち意見だけど。

望月:そうですね。テーマの一つ。実際書き始めてるんですけど・・まだ全然進んでないですが。一個の大きなテーマとしてはそれがありますね。たぶん僕みたいな経験をした人は、この世にたくさんいて。そのひとつひとつがマジョリティの力によって潰されてきた。で、それを声を挙げられなかった人たちが大半だったけれども、幸い僕は・・てかまだ出版してないですけど(笑)・・幸い僕はそれを声にする力を持ってたので、ここにこの小説なりメモワールなりを書いている、みたいな。パッセージはあります。

ゆかり:すばらしい〜書いてください!読みます!読みたい!頑張ってください。

望月:はい、がんばります。こうやって世界に配信したらモチベーション高まるかな(笑)

ゆかり:そうそう!みなさん、読みたい人はもっちーさんに「私も読みたい!」ってツイートしてくれれば、それでアカウンタビリティにもなるしね。

望月:そうですね。

ゆかり:すばらしい。OK!じゃあ、質問が10個ありますので、あんまり深く考えずに答えてください。好きなデザートはなんですか?

望月:好きなデザートですか?すごくスペシフィックでいいですか?レイディエムのミルクレープです。ニューヨークにレイディエムってケーキ屋さんがあるんですけれども、そこのミルクレープがすごく美味しいので、それ。

ゆかり:いいなぁ!初めて聞いた。でも気になる。

望月:私、結構何か新しく食べたもの、食べた時にすごく感動する癖があって。「あっ生まれて初めて、こんな美味しいもの食べたことない!」って、思うことがあって。

ゆかり:そういえば、もっちーさん、Twitterでも「生まれて初めて、なんとか・・」っていうのを考える人なんでしょう?

望月:(笑)そうなんです。幸せですよね。

ゆかり:「初めてこれをしたのはあの時だった」とか、そういうのを覚えているタイプの人なんですね。

望月:そうなんですよ、記憶容量の無駄遣いをしているんですが(笑)

ゆかり:(笑)

望月:レイディエムのミルクレープ食べた時は、すごく感動して。ニューヨークに行ったら絶対行くようにしています。

ゆかり:ニューヨークって近いですか?

望月:はい、比較的。中西部なので。飛行機だったら1時間半くらいで行けちゃうので。

ゆかり:いいですね。羨ましい。いいなぁ。

望月:車で行く猛者もいますけど、車は流石に8時間くらいかかっちゃうんで。

ゆかり:OK。2番。今何を読んでいますか?もしくは最後に読んだ本は?

望月:今読んでいる本はですね、Jacob Tobiaっていうトランスジェンダーのエッセイストなんですかね・・ちょっとバックグラウンドはわからないんですけど。その人の書いたSissyって本を読んでいます。これは、自分のトランスジェンダーとしての経験を元にしたメモワールなんですけども。すごく読みやすくて、”たとえ”がすごく面白くて。たぶんゲイであってもトランスのかたであっても、たぶん似たような経験をしてきていると思うので、すごく共感でき、それを上手な描き方で描いているので、2年くらい前にニューヨークタイムズベストセラーに選ばれてた本なのですけれども。

ゆかり:面白そう。

望月:あと1時間くらいで読み終わるのですが。「あ、こういう風に例えるのか!」・・全然違うものを例えてくるんですよ・・ちょっと咄嗟に説明できなくて申し訳ないのですが(笑)

ゆかり:大丈夫、大丈夫(笑)

望月:たとえが面白いなって思って読んでいます。

ゆかり:メモっときます。OK。3番、座右の銘はなんですか?

望月:座右の銘は、現実的なものと、反省すべきものと二つあるんですけれども。まず、自分の性格をすごくよく表してるなって思うのが、種田山頭火の「明日のことは明日考えよう」みたいな。Exact quoteじゃないんですが、そういう漢字の俳句を残していて。

ゆかり:なんとなくわかる、スカーレットオハラみたいな。

望月:それが、自分の中の自分をよく表している座右の銘だなとは思うんですけど。でもね、そういうことやってるとたぶん良くないと思うんですよね。そうやって物事を先延ばし先延ばしにしてきて、気がついたらこんな年齢になってしまったので(笑)

ゆかり:(笑)

望月:本当の自分への戒めの座右の銘は「千里の道も一歩から」ってことですかね。大きなプロジェクトをコツコツとやるってのがすごく苦手で。どうしてもゴールばっかり見てしまって、あぁゴールあんな遠いわぁってなって・・でも、コツコツコツコツ一歩一歩、気がつかないうちに、最終的にはゴールに着いてるぞっていうのが本当のサクセス風な人なのかなぁって思って。小さなことをコツコツするのが自分にとって一番苦手なことなので、頑張ろうと思っています。

ゆかり:なるほど・・OK。4番。何が怖いですか?

望月:私、閉所恐怖症なので、やっぱり狭いところが苦手ですね、日本にいた時から。日本の住宅としては比較的広いところでずっと育ってきたってのも関係しているのかもしれませんが。日本で住めない理由の一つは、狭い。

ゆかり:狭い・・確かに、道とかも狭いしね。

望月:はい。アメリカ・アナーバーに来る前はテキサスに住んでいたんですけれども、テキサスは本当に何もかもEverything is big in Texsas.って言いますが、何もかも大きくてすごく幸せでした(笑)普通の値段のアパートでもすごいゴージャス・・ゴージャスと言うかただ広いだけですけど、広いアパートでよかったですね。狭いとこ、怖いです。

ゆかり:じゃ、5番。今までで人に言われたことで心に残っていることはあります?良いことでも悪いことでも。

望月:はい。これは、どちらかというと悪いことかな。人に言われて自分を戒めるために使っていることなんですけど。ある時上司に言われた言葉があって「望月さんてあんまり頑張ったことないでしょう」って言われて。「あなた自分で頑張らなくてもなんでも出来ると思ってるかもしれないけど、そうじゃないのよ」とか言われて。「望月さんは自分が出来ることしかしない。そして自分が勝てる試合しかしない。だからそういう誤解を持ってるかもしれないけど、ちゃんと自分が勝てない試合、自分の出来ないことに挑戦するとか、そういうことをしなくちゃダメよ」みたいなこと言われて。

ゆかり:厳しいなぁ!

望月:言われてみればそうかも、とか思って(笑)勝てる試合しかやる気がしないので。Step out of your confort zone.って言葉が英語にありますけど、コンフォートゾーンの中だけでなくて自分のコンフォートゾーンの外にも行かなくちゃダメだなって思いました。

ゆかり:今その話聞いて、そういうこと言う上司ってどうなん?って思ったけど・・でも多分、もっちーさんのこと思ってあえて言ってくれたんですね、厳しい言葉を。

望月:もちろん、うん。

ゆかり:6番。無人島に一個だけ持って行けるとしたら何を持って行きますか?

望月:それってなんでもいいんですか?(笑)

ゆかり:なんでもはダメです(笑)現実的に無人島に持って行けるものです。スマホとかダメです。島流しになってる。

望月:ドラえもんの四次元ポケットとか考えてたんだけど。

ゆかり:ダメダメ(笑)

望月:え〜そうですね・・一つだけ持っていくとしたら・・ゆかりさんかな〜

ゆかり:え!(笑)人はダメ、私を連れて行かないで!

望月:一緒に無人島でサバイバルしましょ!

ゆかり:(笑)人はダメっす。

望月:すごく陳腐な答えしかないんですけど、やっぱりナイフですかね。いろいろなことがナイフがないと始まらないかなって思って。すごく現実的になってしまいました。

ゆかり:スマートな答え。

望月:すみません、つまらない答えで(笑)

ゆかり:OK。7番。どんなことがあなたを脆く感じさせますか?

望月:そうですね・・さっき英語で小説を描き始めたって話もしましたけど、自分の出来ないことは挑戦しないって自分の悪い性格についても話しましたが、たぶん深い部分で僕は色々自信がないのかなって思って。よく、周りの人には”自信家”みたいに思われてたりもするんですけど。自信家で社交的で・・みたいな。でも実際は僕、どちらかと言うと内向的な性格なので、ソーシャブルな社交的な内向型って言うのもあるらしいので、僕はそれなんじゃないかなって思っているんですが。世の中が僕を見ているイメージと、”本当の自分”・・”本当の自分”とか言うとなんだかすごく厨二病みたいですけど(笑)本当の自分にすごいギャップがあるなって思っていて。かといって”本当の自分”を隠しているって訳でもなくて。いつも100%自分全開で生きているつもりでいて、たぶん周りもそう思っているんですけど。でも深い部分ですごく僕は自信がなくて。例えば何か新しいものに挑戦する・・新しい、この世に無かったものを作り出した人とかを見ると、やっぱり勇気が必要だったんじゃないかなって思うんですよ。さっき出た伊藤詩織さんにしても、スティーブ・ジョブズにしても、ビルゲイツにしても、小説家にしても。そこには今までなかったものを作り出すって部分において、エネルギーがいるし、勇気がいるし、精神的なタフさも必要だと思うんですけど。僕はなんだかそれがすごく欠けているような気がしていて。もっと自分のやっていることに信念や自信を持って突き進もう・・どうしてもダウトが出てくるんですよね・・日本人が英語で小説書いてどうするの?日本語で書けば?みたいな(笑)いろいろな雑音が入ってくるんですが・・自分で作り出した雑音が。それで自信もなくなったりもするのですが。やっぱり自分を信じて、自分に自信を持って、これは自分にしか出来ないことだって信じることが大切なのかなって思ってます。それが出来ない今の現状がヴァルネラビリティかなぁって。出来るようになりたいなって思っています。

ゆかり:なるほど。結構そう思う人、たぶんいっぱいいると思います。

 8番。自分の力で変えられることが一つあるとしたら、何を変えますか?

望月:とりあえず今の大統領にやめていただきたいですね。

ゆかり:選挙、投票できるでしょう?

望月:私、出来ません。グリーンカードホルダーなので、シチズンじゃないので。

ゆかり:グリーンカードホルダーは出来ないんだ。なるほど。じゃぁ私と一緒だ。私も永住権はあるけど、選挙投票できないから。

望月:はい。でもレジスタートボートが始まったので。Twitterでも色々、ビリーアイリッシュとか、エラスミスとか有名人が、レジスターした、選挙登録してね、みたいな動画を出しているので。学生に・・今日ツイートしましたけど・・大学の「選挙登録しましょう」みたいなページがあるのでそれを学生に送っておきました。4年前は選挙に行かなかった人が多かったので、それも敗北の原因だったのかなと思うので。私の学生は4年前はまだ中学生とかで選挙権なかったので今回が初めての選挙。「みなさん、4年前はみなさんの先輩たちが選挙に行かなかったために・・」

ゆかり:こんなことに(笑)

望月:(笑)こんなことになってしまいました。

ゆかり:アメリカすごいことになってるから。

望月:そうですね。アメリカの大統領というものは、一旦大統領になったからには、全ての国民のために大統領でなくてはいけないと思うんですよ。でも、あの人は基本的に自分の支持者のための代表、大統領でしかないじゃないですか。それは理想で、今までの大統領が本当にそれをできていたかどうかは置いておいて。まず今の大統領はそれをしようとすらしていなくて。差別や断絶や分断を促進するような、助長するような発言をわざと意識的に・・たぶんわざとだと思うんですよね・・流石にただ馬鹿だからポロッと言ってるんじゃないんだと思うんですよ、絶対あれはわざと、意識的にやっていると思うので。そういうところが、なぜ、国民の半分だけを代表する大統領でいてそんなに幸せなのかな。間違ってるなって思います。

ゆかり:みなさん。投票できる方は是非投票してください。

 9番。今はまっているものはなんですか?

望月:そうですね・・今というか、結構長いスパンなんですけど・・私はオーディオブックを聞くのがすごく好きで。今読んでいる本も英語の本ですけれども、ずっとアメリカに来てから、アメリカに来る前からそうですが、英語はもちろん好きだったので、英語の本とか読まなきゃなとは思ってたんですけど、もちろん仕事の資料とか、大学院生の時は大学で読まなくてはいけないリーディングアサインメントとかは英語で読んでましたけど。自分の楽しみとして小説とかを英語で読むっていうのがずっと苦手意識があって。でも3、4年くらい前ですかね、ドライブする、運転する時間がすごく長くなって、生活の変化のせいで。それでその間やることないなって思って。はじめはポッドキャストを聞いてたんですけど、そのうち、あ、ポッドキャストいいなって思って。そのうちオーディオブックに代わって行って。一番はじめに読んだのが、ヒラリークリントンの書いた What happend だったんですが。内容なかなか難しかったですが、まぁだいたい、運転しながら聞いて理解できる感じだったので、あ、今まで自分は”本を読む”って苦手意識があったんだけど聞きながらだったら全然行けるわって思って。それ以来、エッセーが多いですね。やっぱり小説は文学的な表現が多いのでなかなか厳しいところがありますが。エッセーを中心にオーディオブックで聞いています。

ゆかり:オーディオブックもね、好きな人多いですものね。

望月:強制的に進むのがいいですね。

ゆかり:確かに(笑)

望月:読んでると知らない表現とか・・

ゆかり:引っかかったりとか・・

望月:辞書調べたり、メモったりとかしてるうちに、小説を読んでいたということを忘れてし・・僕、3歩歩くと3歩前のことを忘れちゃう人なので(笑)集中が続かないので、オーディオブックだと強制的にポンポンポンポンって前に進んでくれるので、それがいいのかもしれません。

ゆかり:最後の質問です。今何に感謝していますか?

望月:そうですね・・この間ふと考えていたんですけど・・Twitterとかでもいろいろなところでプリビレッジについての問題とか発言とかよく見ますよね。恵まれている人と恵まれていない人みたいな話ですよね。僕やっぱり、これまでの自分の人生を振り返ってみて、もちろんすごく恵まれていた部分が多いなっていうのがあって・・軽率なことは言いたくないのですが・・お金に関して困ったことが生まれてこの方、一度もなかったので、それはもちろん親のおかげなので。そういう、自分だけの力ではなく・・若い頃はやっぱり自分が能力があったから、自分で自分の人生切り拓いてきたみたいに思ってたところが多かったと思うのですが、やっぱり最近プリビレッジの話とか聞くと、まずスタート地点から違うっていうのがすごくあって。言われてみればスタート地点から違ったのかなぁ。教育、お金・・特に日本でもアメリカでも、お金イコール教育に結びつくので、お金がなきゃ良い教育が受けられない、で、両親には幸いお金があったので、息子たちに良い教育を受けさせることができたので、それもあって今の自分があるのかなって思うと、そういうことを「当たり前だった」とか「自分の能力でここまで来た」とか思わず、親に感謝かなと思っています。

ゆかり:そうですね。素晴らしい。ありがとうございました。たぶんこれ、今までで一番長いポッドキャストのエピソードになった(笑)

望月:すみません(笑)編集して60分にしてください。

ゆかり:60分で足りないかも・・頑張ります(笑)ありがとうございました。今週のゲストは望月義弘さんでした。ありがとうございました。

も:楽しかったです、こちらこそ。

***

さて、もっちーさんとの会話、いかがでしたでしょうか?かなり濃い会話になりましたが、とても大事なトピックをカバーできたなという気がしています。もっちーさんのTwitterには小ノートでリンクしておりますので、是非フォローしてみてください。

さて、今週のポジティブですが、今週は2つあって、一つはですね、私の長男が23歳になったことです。彼は今モントリオールの児童劇団で芝居をしているのですが、今日フェイスタイムで話しましたけれど、元気そうで何より、ありがたいなという感じですね。そしてもう一つは、今やっているブッククラブのメンバーの勧めで、Morning Pagesを始めたことです。Morning Pagesというのは、ジュリア・キャメロンという人が書いた”The Artist Way”という本で有名になったものなのですが、朝一番に、とにかく何も考えずに、3ページジャーナルに書く、というものです。書く内容はきちんとしたものでなくてよくて、買い物リストとか、眠いとか、とにかくなんでも良いんですね。頭の中にあるゴチャゴチャしているものを紙の上にtransferする、という感じで、これ英語で”brain dump”とか言いますけど。そうすることによって頭の中がスッキリするそうなんですね。それでもっと大切なクリエィティブ・ライティングとかが出来る、というのが彼女の説なんですけれども。このMorning Pagesは人に見せるために書くわけではないので、グチャグチャでも良いそうなんですね。ジャーナリングの大切さっていうのは色々なところで言われていると思いますけど、今私がブッククラブで読んでいるブレネーブラウンの”Rising Strong”の本でも、感情的になった時に、15分から20分の短時間にパパッと書き出すということを4日以上続けると、anxietyー不安症、あとruminationーこれは1人でずっと黙々と考え続けてしまうこと、それからうつの症状も軽減されるそうで、免疫システムにも効果的なのだそうです。私はこのMorning Pagesは過去に何回かトライしてるんですが、長続きしなくて数日でやめてしまっていたんですね。今回ブッククラブの仲間でMorning Pagesの話が出て「私やったことあるけど、続かないんだよね」という話をしてたところ「じゃぁ、みんなで一緒にやらない?」という話になって。早速月曜日から始めて、今のところ・・今日土曜日なんですけれども、今日まで続いています。こういう風に、ブッククラブのように定期的に会うグループだと、やると言ったことをちゃんとやっているかチェックしてくれるーこういうのをアカウンタビリティって言いますけれども、アカウンティビリティのグループとしても機能していて本当にありがたいです。10月から始まるブレネーブラウンブッククラブも、是非こういう風にお互いを励ましてサポートしあえるグループにしていきたいなと思っています。

それでは、今週も聞いていただいてありがとうございました。

はみ出し系ライフの歩き方は、プロデューサー・ホストのピアレスゆかり、そしてクリエィティブディレクターの大塚ゆうこさんとで制作しております。番組に関する感想は是非リスナーさんのコミュニティ、Facebookの“はみライコミュニティ”にてシェアしてくださいね。メッセージはInstagram”yukaripeerless”、もしくははみライのインスタアカウント”hamidashikei”でお待ちしております。はみライへのサポートは、一回限りの PayPal、もしくは月ごとのサポートはPatreonで可能です。番組のスポンサーは随時受け付けておりますので、こちらも是非ショウノートをチェックしてみてください。

今週も黙らない女、男でいてくださいね。

Be brave, be kind, but don’t be silent. Your voice matters. Stay safe everyone, and thank you for listening.