混血人種の骨髄移植適合の難しさを描いたドキュメンタリー、Mixed Match

ビクトリア映画祭で日本の映画、または日系フィルムメーカーの映画が観れるということは先日ブログに書きましたが、今年最初の映画祭の作品を昨夜観てきました。

フィルムメーカーでアニメーターのJeff Chiba Stearnsさんは、バンクーバー在住の日系カナダ人。2011年にOne Big Hapa Familyという作品でハーフや混血を示すハワイのスラングHapaという呼び名を使って、日系だったために戦時中強制的に送還された祖父母達の話や、世界中に広がりつつある国際結婚とその結果増え続ける混血の子ども達、そして「君は、何?」と問いかけた時の子ども達の答えなどを通して見るアイデンティティの問題などを綴ったドキュメンタリーでビクトリア映画祭に参加された際に初めてお会いしましたが、今回新しい作品、Mixed Matchで再度ビクトリアに来て下さいました。

Mixed Matchはひとことで言うと骨髄移植の話です。

Mixed Match – Festival Trailer 2016 from Mixed Match on Vimeo.

白血病や骨髄異形成症候群( Myelodysplastic Syndrome -MDS)、先天性免疫不全症候群、再生不良性貧血(Aplastic Anemia)などの病気にかかると、まずは家族などから骨髄の移植が可能かどうかを調べます。赤血球にA、B、O、AB型の血液型があるように、白血球にも血液型があり、HLA型とよばれます。

赤血球にA、B、O型の血液型があるように、白血球にも、HLA型があります。
HLA型とは、ヒト白血球型抗原の略で、個人に固有の遺伝性の抗原です。

骨髄移植を成功させるためには、患者さんは、白血球の型(HLA型)の一致する人から骨髄液を提供してもらわなければなりません。

HLA型が一致する確率は兄弟姉妹で4人に1人、それ以外では数百人から数万人に1人とまれなため、登録患者で骨髄移植を受けられるのは、 三分の一にとどまっています。これは、ドナー登録者数が足りないためです。

ー北海道骨髄バンク推進協会

ただでさえ骨髄移植の適合者(マッチ)を見つけるのは上記のように数百人から数万人に一人と難しいのですが、これがいわゆる混血(Mixed Race)の人になるとまさに「干し草の中から針をみつける」ほど難しいとのこと。この作品中には何名か、実際に骨髄ドナーを探している人達がでてきますが、ドナー探しの旅はとても長く、待っている間に病気が進行したり、ドナーが見つからぬまま病気との戦いに敗れてしまう人も居て、いわゆるハーフの子ども達を持つ母親として、非常に身近な問題です。実際にお子さんを失ったご夫婦も、いかにマッチを見つけるのが困難だったか語って下さって、涙無くして観れない作品です。

骨髄提供が間に合わず亡くなったハンターくんとそのご両親

ただでさえマッチを探すのが困難なのに、ドナーは登録している人の中からしか探せません。そしていわゆる混血の人達は白人の人達に比べて登録者の絶対数が少ないという問題。また献血の募集のように「ただいまアジア系の人の骨髄ドナー登録を募集しています」と呼びかけても、直接の父親や母親がアジア人で無い場合、(祖父母や曾祖父母の一人がアジア人であった場合など)は本人が「アジア系」という自覚が無いため、登録募集も素通りしてしまったり。。。また「人種」という社会的な概念で区分けをすることに疑問を呈するドクター等も紹介されています。

骨髄ドナーのアレクサンドリアさん

また、登録者の中でマッチが見つかったとしてもその約半分は骨髄移植を断ると言う話も聞き、個人的には憤りを隠せません。自分の子どもや家族が10年近く探してやっとマッチが見つかった結果、その適合者に移植を断られる患者さんの気持ちは計り知れません。

骨髄提供をうけるイマニちゃん。

非常に興味深く、勉強になる作品で、できるだけ多くの方に見て頂きたい作品です。

ビクトリアでは明日2月5日日曜日にCapitol 6にてもう一度上映され、Canadian Blood ServicesのOne Matchという骨髄ドナー登録テーブルもあります。ドナー登録できるのは17歳から35歳までの男女。ほおの内側を綿棒でこすってサンプルを回収します。

最近ではへその緒に含まれる血を採取して登録する「さい帯血移植」も盛んで、バンクーバーで出産される方はドナー登録することが可能だそうです。

左から、Mixed Marrow発起人のAthenaさん、現在もドナーを探しているKrissyさん、そしてフィルムメーカーのJeffさん

現在、カナダにはMixed Raceにフォーカスしたドナー登録団体はなく、One Matchがすべて担当していますが、アメリカですとMixed Marrow という団体があり、発起人の日系アメリカ人のAthenaさんが「一人でも多くの人を助けたい」として活動する様子が描かれています。

自分の子どもも含め、私の周りには多くのMixed Raceの人達がいます。その中の誰が、いつ血液の病気になるかはわかりません。そんな時にできるだけ多くのチャンスを残してあげたいと思います。

この映画を自分の街で上映したい、という方はJeffさんに連絡して下さい。

このドキュメンタリーに関する詳しい情報、またドナー登録はMixed Matchのウェブサイトからどうぞ。

骨髄移植に関する情報は、北海道骨髄バンク推進協会のサイトを参考にさせていただきました。