ホームレスからホームフルへ

ビクトリア、バンクーバーではホームレスの数が他の都市に比べて多いと聞きます。比較的温暖なため、冬を過ごしやすいというのもその理由の一つでしょう。

日本からカナダに来たばかりの人は、ホームレスが多いことにびっくりするようです。大抵の人たちは道ばたに座って物乞いをするか、空き缶を集めてリサイクル場に持って行って小銭をもらったりしています。私などは長年こっちに住んでいるのである意味慣れてしまっていますが。。。大抵のホームレスは人に危害を与えたりしませんが、通常地元の警察官が見回って、問題がないかチェックしています。

ビクトリアにはOur Placeというホームレスや社会的弱者をサポートする施設があり、誰でも無料でそこで提供される食事を食べたり、シャワーやパソコンを使うこともできます。

先々週私はそこで初めて朝食を提供するボランティアをしましたが、みんないわゆる「ストリートピープル」ではあるものの、フレンドリーな人ばかりでした。中には身なりの良い、「ほんとにあなたホームレス?」というような人もいましたが、この不景気の際、みんなそれぞれ事情があるんだなあ、と思わず深く考えてしまいました。私だって、いつこのような施設にお世話になるかわかりません。。。

この日の朝食は、ハム、スクランブルドエッグ、そしてポテト。一見典型的なカナダの朝食のようですが、これはこの日だけの特別な朝食だったのです。友人が「朝食のボランティアをしてくれる人を探している」とFacebookに載せていたのがきっかけで私はボランティアに行ったのですが、実は、この友人、自分の誕生日の記念に、ホームレスの人々の朝食をスポンサーしたのです。私は当日までそのことを知らなかったのでびっくりしたのですが、この施設では、通常配られる朝食はおかゆだけなのだそうです。

Our Placeでは朝食スポンサープログラムというものがあって、一番金額の低いプランが$300で、寄付すると、そのお金でおかゆ、果物とコーヒーというようにホームレスの人達の朝食をスポンサーしてあげられるのです。素敵なアイデアですよね。私の友人は、その中でも一番上の、$450を誕生日のお祝いにプレゼントの代わりに友人に募り、そのお金でスポンサーしたのです。思わず、涙が出そうになりました。

ここでのボランティア体験は私自身とても印象に残り、施設の人に、「是非また何か必要な時は連絡してください」と名刺を渡してきました。朝食のスポンサーは、私もぜひやりたいと思います。

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ビクトリアには、他にもそんなホームレスの人たちを助けようと、フルタイムでサポートする人たちがいます。リチャード・ルブランクもその一人です。

リチャードは、Creating Homefullness Society(ホームレスではなくホームフル)という非営利団体の代表として、彼のオーガニック農園、Woodwynn Farmsにて、ホームレスの人々に住む場所を提供し、さらに農場の仕事を教え、彼らが自立できるようなトレーニングを行っています。

ホームレスの大半は、精神的弱者や、アルコール、ドラッグの中毒に悩まされている人が多いですが、もちろん、農場ではお酒やドラッグを認めていませんし、仲間達と肉体労働をしながら様々な技術を身につけ、社会に貢献できるようになることを応援する素晴らしいアイデアと言えるでしょう。

リチャードは、この農場のシステムをセラピューティックコミュニティと呼んでいます。治療共同体という意味ですが、このシステムは特にイタリアでの高い成功率で知られているそうで、ビクトリアでもこの例にならって行こうと今まさに足を一歩ふみだしたところなのですが。。。

実は、この農園のあるサーニッチ市では、この農場の建築規制が、現在の所、農業のみが許される土地ということになっていて、ここに人を泊まらせることは違法なのだそうです。

農場側はこれは特別なケースだからなんとか規制を変えてもらえるように市に要請しているのですが、近隣の住民から、ホームレスの人たちがくると治安が乱れる、騒音が心配などの理由で反対されています。

このような態度を英語ではNIMBY(Not In My Back Yard-都合の悪いものはよそで対処してくれという態度)と呼びますが、ホームレスを少しでも減らすための素晴らしいアイデアをつぶす、ある意味いじめのようだとして、ビクトリアでも議論が絶えません。

この農場は193エーカー(781 043.29 平方メートル)あり、一番近い隣人は最低でも1キロ離れているので、騒音を心配する必要はありませんし、敷地内ではドラッグやお酒はもちろん禁止で、みんなでお互いを助け合い、肉体労働とカウンセリングなどで自立をめざすプログラムに何故反対する人がいるのか、、、理解に苦しみます。

反対者の理由の中には、規則は規則なのだから、農場も決められたとおりの土地の使用をするべきだというものもありますが、これは個人の土地利用の問題ではなく、非営利団体なのです。

そんな中、Woodwynn Farmsにて、We Believeというファンドレイザーが行われました。バーベキュー、コンサート、子供にはわらで作った迷路など家族で楽しめるイベントでした。

Woodwynn Farmsをサポートしたい方は是非サイトに行って寄付をしてください。毎週土曜日にはファーマーズマーケットも開催されるそうなので、地元の人は是非行ってみてくださいね。