【1000冊紹介する 016】1 Hour Photo – Day 48

テツロウ・シゲマツとの友情は2015年まで遡る。彼の1人芝居Empire of the Sonのチケットを偶然サイレントオークションでゲットしたのが事の始まりだ。当時はテツロウのことは知らなかったし、この芝居のことも全く知らなかった。ポスターをみて、何かのバンド?と思ったくらいだ。

私の予想は全く間違っていて、オットと一緒に2015年の秋にEmpire of the Son を観に行って私は打ちのめされた。Empireは、テツロウと彼の父親のストーリーで、日本人の父と息子の話、そして同時に後悔と哀しみの話でもある。私は芝居の大部分で泣いてばかりだった。

テツロウは素晴らしいライターで、名前をつけることができない感情を書き表すことに素晴らしく才能のある人。翌年に再演された時には、もう一度観に行ったくらいだ。今でも、私の中でナンバーワンの芝居である。

私は素晴らしいパフォーマーが大好きで、テツロウのように心のなかに特別な場所があるアーティストが何人かいる。Ivan Coyote やAlexandra Tatarsky もその中に入る。もっと簡単な言い方をすると、私は才能のあるアーティストの大ファンということ。

今ではテツロウを友人と呼べることに感謝している。よくテキストメッセージで会話するし、執筆について、暗記の仕方について、そして彼の制作中の次の芝居について、家族について、よく話をする。

去年、テツロウの最新作、1 Hour Photoを観に行った。今回の芝居は、マス・ヤマモトの人生が語られる。マスの娘、ドナ・ヤマモトは女優で、この芝居をプロデュースしたVACT(Vancouver Asian Canadian Theatre)のアーティスティック・ディレクターだ。

先日、テツロウが親切にも1Hour Photoの書籍版を送ってくれた。芝居でみたものを読み返して再度ストーリーを追体験できたのはとても良かった。

1 Hour Photoでは現在でもバンクーバーで健在なマス・ヤマモトの数奇な人生が語られる。マスの人生は第2次世界大戦中に日本人が強制的に収容所に送られたことで、一時停止させられてしまう。マスと彼の家族はレモン・クリーク収容所に送られ、父を早くに亡くしたマスは、家計を支えるためにりんご農園での仕事をしなければならず。他の友達のように大学に通うことができなかった。

しかしマスが普通の人と違うところは、その回復力だ。収容所から開放されたあと、マスは北極での仕事を取る、その後3つの大学の学位を7年かけて取得し、政府の研究員になる。そしてその後はJapan Cameraという北米の大きな写真屋チェーンで1 Hour Photoのフランチャイズを始めるのだ。

先日この本がテツロウから届いた日のブログにも書いたが、この本の巻頭にある写真家の引用が、まさにマスにぴったりだった。

“Character, like a photograph, develops in darkness” 

性格は、写真と同じように、暗闇の中でつくられる。

彼の青年時代は日系カナダ人にとって非常に暗いものだったが、それが彼の回復力の強さを育てたのだろう。この本を読んでいて、芝居を見た時と同じことを思わずにいられなかった。それは、私はこの人生をめいいっぱい生きているだろうか?そして、どうすればマスのような並外れた人生を送ることができるのだろうか?ということ。

その答えはわからない。たぶん私はまだ人生の1章の途中なのだろう。