モーリス・センダックといえば「かいじゅうたちのいるところ」が最も有名な20世紀を代表するアメリカの絵本作家ですが、私は「かいじゅう〜」に出会って以来、15年ほど彼の絵本を集めています。独特の美しい画風と、彼自身がいつまでも子供であるような、突飛なストーリーが大好きです。
子供の頃のせつなくてはかない心情を、いつまでも忘れなかったセンダック。大人にはちょっとぎょっとするようなストーリーでも、すんなりと入っていける子供も多いようです。
今日は、そんなセンダックの本をいくつかまとめてご紹介します。
「あなはほるもの おっこちるとこ」A Hole Is to Dig(1952)
これはルース・クラウスが書き、センダックはイラストのみを担当していますが、子供のためのイラスト辞書のような感じで、「ちいちゃいこどもたちのせつめい」と邦訳版にはサブタイトルがついています。素朴な絵で子供のまわりのものを定義しています。
「てはつなぐもの」「うではだきしめるもの」「はなはこすりあわせるもの」「おしろはすなばでつくるもの」など、癒やされる説明ばかり。何度読んでも、子供の目線の説明に飽きることがありません。おすすめ。
「かいじゅうたちのいるところ」 Where the Wild Things Are(1963)
センダックのもっとも有名な本で、2009年に映画化もされました。最初の邦訳は1966年でしたが、1975年に神宮輝夫氏の訳で「かいじゅうたちのいるところ」という新しいタイトルで再度発行され、現在ではこちらの訳の方がより定着しています。
いたずらっ子のマックスが、お母さんに晩ご飯抜きのおしおきを受けた夜、彼の不思議な旅がはじまります。センダック独特のかいじゅう達がとても良い味を出しています。エンディングも大好き。これは暗記してしまうほど我が家でもなんども読み返している本です。
「まよなかのだいどころ」In the Night Kitchen (1970)
夜中に物音を聞いて「うるさいぞ しずかにしろ!(Quiet Down There!)」と叫んだミッキー。あっというまに、3人のパン職人のいる台所に迷い込みます。あやうくパン生地の中に入れられて焼かれてしまいそうになるミッキーですが、機転をきかせて脱出します。
ありえん!というレベルのストーリーが逆に楽しい。コミックのような画風も良い。
「まどのそとのそのまたむこう 」Outside Over There (1981)
ゴブリンに連れ去られた赤ちゃんの妹を取り戻すためにまどのそとのそのまたむこうへ後ろ向きに落ちていくアイダ。美しくも少し不気味なイラストに、惹きつけられる人も多いようです。実際に起こったリンドバーグの息子誘拐事件をもとに書かれたそうです。
「ミリー―天使にであった女の子のお話」Dear Mili(1988)
1983年9月28日に、グリム兄弟の一人、ヴィルヘルム・グリムが一人の少女に宛てた手紙が発見されました。手紙にはこの少女にあてたお話が書かれており、150年ものあいだ家族に保管されていたものがセンダックのイラストによって蘇りました。5年の月日をかけて完成されたイラストはすべてが精密でため息が出るほど美しいものばかり。
母親と二人暮らしだったミリ。ある日、村にいくさが近づいたため、母親はミリを森の奥へ逃がします。森の中で不思議な老人の家にたどり着いたミリは、食事を作って恩返しをするのですが。。。神秘的なお話です。
60年間にわたって子供のための本を書き続けたセンダック。2012年に亡くなってからも、彼の本を愛し続けるファンは後を絶ちません。ぜひ読んでみて下さい。