【1000冊紹介する023】シンデレラ 自由をよぶひと

シンデレラ 自由をよぶひと 河出書房新社

子供の頃、数あるおとぎ話のなかで、シンデレラが一番好きでした。Underdogというか、いじめられていた人が突然プリンセスになるというところがスカッと気持ちよかったのかも知れません。

Twitterで仲良くさせて頂いているNY在住の弁護士兼翻訳家・エッセイストである渡邊葉さんが、このたび新しいシンデレラの絵本を翻訳されたとのことで、送っていただきました。

ポッドキャストにも来ていただいたのでぜひ聴いてみて下さい。

この本は邦題は「シンデレラ 自由をよぶひと」となっていますが、原題は”Cinderella Liberator”で、「説教する男たち」で有名なフェミニスト作家のレベッカ・ソルニットによるものです。翻訳はさん、解説の訳は渡辺由佳里さんです。

ポッドキャストでも葉さんが仰っていますが、ある日突然Fairy Godmotherがやってきて素敵なドレスと靴と馬車を出してくれて、舞踏会へ連れて行ってくれるという元来のシンデレラのストーリーは大人になって考えて見るとたしかにかなり棚からぼた餅的なところがあります。いじめられて悲しんでいたら魔法使いが全て解決してくれ、最後は王子様に見つけて貰ってめでたしめでたし。and they lived happily ever afterーそしてその後一生幸せに暮らしました。って、ほんとう?とシニカルな現代人の私は思ってしまいます。

「説教したがる男たち」で「マンスプレイニング」という言葉を作ったソルニットはもとは姪のためにこの物語を書き直すことにしたそうです。

「生きにくい」時代と言われる現代。女性は、昔に比べると少しは選択肢が増えたとは言え、まだ結婚や出産その他の社会からのプレッシャーを感じて生きていると思います。Liberatorとは解放する人、自由にする人という意味がありますが、ソルニットは解説で「私はこの本を解放についての物語にしたいと思いました」と書いています。この本ではシンデレラだけでなく、王子様も、いじわるなお姉さん達も自由になります。ネタバレになるのでどういう結末になるかは明かしませんが、とっても楽しい物語です。アーサー・ラッカムの影絵風のイラストもとても素敵です。ぜひ手に取って読んでみて下さい。

絵本ですが、字は多めなので8歳くらい、小学校高学年から向けだと思います。