今わたしたちにできること

新型コロナウイルス(COVID-19)がパンデミックと認定され、私達の「日常」はすっかり覆ってしまいました。私の住んでいるカナダでは2020年3月22日の時点で感染者数は1385人、ブリティッシュコロンビア州(カナダ西海岸)では424人となっています。カリフォルニアのロックダウン(外出禁止令)までは行きませんが、国境は閉鎖され、生活に必要でないビジネスはほぼ全て閉まり、レストランはテイクアウト・配達のみ、美容室やネイルサロンなど濃厚接触するビジネスは閉鎖、学校も無期限で休校になっています。スーパー、薬局などの生活に必要なビジネスは通常どおり営業されていますが、入場制限があり、店の中でもレジに間隔をあけて並ぶよう線が引かれています。

私個人の状況ですが、通訳や留学などのクライアントさんがほぼ全員キャンセルすることになり、返金の対応で、はっきりいって倒産の危機です。バイト先のチョコレート屋も閉店になりました。フリーランス(リモート)でやっている翻訳とセンティメント解析の仕事だけは変更なく続いているのだけが不幸中の幸いです。夫が働いていたお店も閉店になりました。

カナダ政府はコロナウイルスのおかげで職を失った人、そして通常なら保険の給付をうけられない個人事業主でも失業保険を給付すると発表しましたし、州レベルでも補償の給付があるようです。銀行は住宅ローンその他の返済のルールを緩和して、公共料金などが払えない人でも、連絡すれば支払い期限を伸ばしてくれるそうです。

先が見えずに不安な毎日ですが、少なくとも路頭に迷うことはなさそうで、カナダに住んでいて良かったと思いました。

お金のことももちろん心配ですが、「自由に外出できない」ということがこんなにストレスになるとは。Social Distancing、これは翻訳が難しいですが社会的隔離、つまり人と距離を置きなさいという強い保険局からの勧めで、みんな家に籠もっています。私自身は一人でいることがあまり苦にならないタイプですし、どちらかというとメンタル的にも強い方だと思いますが、このSocial Distancingを始めて1週間ほどで、かなりしんどくなってきました。

家にいるのが辛いのではなくて、自由に外出できないこと、そして外出すると感染の危険があるということが辛いんですよね。「高齢者じゃなければ、かかっても回復する」とのんきに考えている人も少数いるようですが、自分は良くても、高齢の家族や知り合いに接触して感染させてしまった場合、死に至るケースもありますし、年齢に関係なく持病で免疫が低い人、呼吸器系に問題のある人にとっては生死に関わる問題です。

なので、必要以外に外出しないことに私は何の異論もありませんが、自由を奪われることがこんなに辛いとは。

ソーシャルメディアを開けば流れてくるのはコロナ関係のニュースばかり。SNSをあまり見ないようにしている、という友人もまわりに増えてきました。こんな状況がいつまで続くの?1ヶ月?2ヶ月?3ヶ月?

あなたが100歳以上の人でないかぎり、これは今生きている人すべてにとって初めての経験のはず。こんなレベルのパンデミックって、誰も経験したことが無いことです。

ふと、戦時中ってこんな感じだったのかな、と思いました。今はまだスーパーでトイレットペーパーやハンドサニタイザーが売り切れ、そして卵、パスタ、肉が比較的品薄のようですが、そのうち砂糖や塩が貴重品になったりして、、、(あまり考えたくない)。食べ物を作る工場も閉鎖されているので、大量生産されているクッキーやお菓子などもどんどん貴重品になっていくでしょうね。

みんな家にいるので、SNSのタイムラインは活発です。みんな、いかにしてこのソーシャルディスタンシングを実行しているか(パズル、家のペンキ塗りなどのプロジェクト、クラフト、アート、料理、お菓子やパン作り)を投稿しています。いきなり、時間だけはたっぷりあるという状況になってしまったので、これまで忙しくて出来なかったプロジェクトに手をつける良い機会だと捉えている人が多いと思います。

それでも、小学校低学年の娘さんがいる友人が、今までこんなことなかったのに大泣きした、とか、メンタルが不安定なティーンエイジャーを持つ友人も、娘さんが夜中にパニック発作を起こした、とか、私と同年代の友人でも、子供達の前でついに張り詰めていた緊張が切れて、大泣きしてしまったとか、毎日家で1回は泣いている、という人もいました。

これまでの大変だったけど普通の生活ー子供のお弁当を作って学校に送り迎えしたり、通勤したり育児をしたり、仕事をしたりジムに通ったり、そういったごくごく普通の生活が、ものの数週間で完全に消えてしまったのです。そして、いつ「普通の」生活に戻れるのか、今の時点ではまだ誰にもわかりません。最初の数日は、英語でも言うところの”Snow Day”、特別な非日常として楽しめていた人も、家に籠もる日が1週間、2週間ど長引くことで、隔離されている状況が「普通」になり、かつての「普通」の生活に喪失感を覚える人も多いようです。

私も、泣くまではいきませんが、軽い鬱状態というか、何もやる気がでません。外出する予定もないので1日中パジャマで過ごし、アイスクリームをストレス食いしてしまっています。この「普通じゃない」状態はいつ終わるの?経済はどうなるの?考えだすと不安だらけになるので、あまり考えないようにしています。

こんな状況のなか、大切なことがセルフケアです。今は子供のために栄養満点の食事を作ることや、子供のスクリーンタイムに厳しくなること、ダイエットすることや毎日仕事をきっちりやること、は優先順位を低くしても良いと思います。

手洗いをきちんとすること、不要な外出を控えることの次に大切なことが、あなたのメンタルヘルスを健康に保つことだと思います。

今はダイエットは忘れて下さい。子供のネット使用も少し多めにみてあげてください。みんなストレスがたまっていると思うので、自分と家族に優しくしてあげることが大事です。

私が今一番癒やされているのが、花です。先日、Facebookで、ある花屋さんが誰もお店に来ないので花が売れ残っている、値段はドネーションで良いので、メールしてくれれば花を配達する」と言っているのを見て、早速連絡しました。数日後にとても綺麗なブーケが届き、花にこんなに癒やされるんだ、と改めて感心しました。スーパーに買い物に行く時も、必ず4−5本で束になっている安い水仙などを買ってきて活けています。フラワーパワー、すごい。

また、このパンデミックで唯一ポジティブと言えることが、テクノロジーのクリエイティブな使い方です。先日はバンクーバーシンフォニーの演奏をライブストリーミングで見ることができましたし、インターネットを使って絵のクラスを無料開放したり、子供むけのストーリータイムなどもあります。映画や電子書籍を無料で開放しているサイトもありますね。こういったものを利用して、アートに触れることも、セルフケアにつながると思います。

家に籠もるようになってから、zoomが大活躍しています。ランダムに世界中の日本人のお友達とお話するzoomチャットは、今まで3回やりましたが、みなさんのそれぞれの地域の様子を聞いて、「大変だよね。。。」と言い合うだけでも何故か心が落ち着きました。私は息子が俳優をしていることと、私自身も劇団の理事をやっていたりするので、シアター関係やアーティストの知り合いが多いのですが、そんな仲間内でもzoomでお芝居を読もう!という声があがり、昨日も30分程度のzoomコーヒーブレイクで近況を報告しあい、下らない雑談だけで、いかに心が軽くなったか。

昨夜も、仲の良い友人の誕生日ということで、zoomで集まってバーチャル誕生会をしました。その時に、一人ずつ、「今、何に感謝しているか」を順番に言っていったのですが、一人の友人が「ニュースで見たけど、国境が閉鎖されたから移動する人が少なくなって、温室効果ガスの排出が減ったっていうのは良いニュースよね」と言っており、みんなで、「これって、実は何かのメッセージなのかもねえ」という話になりました。

私は無宗教の人間ですが、環境が破壊され、そのほとんど全ての責任が人間にあるなか、コロナウイルスのおかげで外出できなくなり、全ての活動をシャットダウンせざるを得ない状況になったことは、何かしら、偶然ではないような気もします。具体的にそれが何なのかは、私にはわかりませんが。

この不安な状況は、もう数週間続くと思われます。その間、手洗いをきちんとし、他人との濃厚接触を避け、テクノロジーを使って愛する家族や友人たちとつながり、自分に優しくセルフケアを実行すること。わたしたちに今できるのは、そのくらいです。

PS:zoomでの動画チャットに興味のある方はお知らせ下さい。次回開催する際お知らせします。