【1000冊紹介する017】The Return of a Shadow – Day 56

今日読み終えた本は、山岸邦夫さんによるThe Return of a Shadowという本。山岸氏はバンクーバー島に在住の方で、何度かお目にかかったことがある。日本人の方が英語で書かれた小説ということで、ちょっと珍しい本といえるかもしれない。

読む前に知っていたことは、第二次世界大戦中のカナダでの日系人の強制収容に関して書かれているということくらいで、それ以外は殆ど何も知らずに読んだ。

日本人のオサダ・エイゾウは日本に妻と三人の息子を残して、単身カナダに出稼ぎに出る。最初はバンクーバー島で伐採業に就くがそのうち戦争が始まり、真珠湾攻撃後、日本人そして日系カナダ人は敵国の外国人として強制的に収容されてしまう。エイゾウは収容所で辛い日々を送り、妻子とも連絡が取れなくなってしまうのだが、ようやく終戦を迎えたあとは敗戦した日本に戻るより、カナダに残って仕事を続けた方が妻子の生活の助けになるだろうとカナダに留まる。そしていつのまにか40年ほどが過ぎ、ようやくエイゾウは日本に帰ることになる、というストーリー。

最初予想していたよりも読み進めやすい展開だったが、戦時中の日本人男性のエイゾウの考え方に、読んでいてときにイライラしてしまうこともあった。エイゾウは日本の家族に手紙を書き続けるが、そのうち日本からの返信が途絶えてしまう。一体、何が起こったのか?

エイゾウはカナダで定年を迎え、ついに日本に帰国し、彼がカナダにいた間に日本で何が起こったのかを知ることになる。謎が少しづつ明らかになっていく。

全体的なトーンはシリアスで暗い。でも戦時中、インターネットも安い国際電話もない時代を知らない私には、エイゾウの行動を一方的にとがめることはできない。この本の中で語られる一連の不幸な出来事は、その当時ならではの問題だったのではと思う。

本のトーンは全体的に暗いのだが、最後の方で思いがけない展開になり、びっくりした。最終的にはやはり哀しい話といえると思うが、それは必ずしもネガティブな意味ではなく、興味深い本だと思った。日系人の強制収容について何も知らない人は一読すべき重要な本だと思う。