フリンジの魅力とは?[#yyjfringe 2/2]

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フリンジはエディンバラ、ロンドン、ニューヨーク、エドモントン、など世界中にフェスティバルがあり、多くのアーティストはこれらの都市、いわゆる「フリンジ・サーキット」を回って旅をしています。
もちろん移動にはお金がかかるし、食費だってかかります。幸い宿泊費はたいていのフリンジではボランティアが泊めてくれる(ビレットと言います。ホームステイのような感じ)のでホテル代はかかりませんが、それもフェスティバル中のみ。
いくら全てのチケット代が自分のものになるといっても、毎回満席にできるアーティストはざらにいるわけではないですし、もちろん経費だってかかります。自分の知名度が低い都市や、新人アーティストだと席を埋めるのでも精一杯です。

フリンジクラブはアーティストやボランティアが集う場所
フリンジクラブはアーティストやボランティアが集う場所
移動でくたくたになりながらも各都市を回り、昼間はリハーサルや打ち合わせ、夕方からは自分のショウがない時間は他のショウの開演を待つ列を目指してお客さんに話しかけ、自分のショウのチラシを配り、ぜひ見に来て下さいね、と宣伝する。。。ショウの後はあとで他のアーティストやファンとの交流、打ち上げ、飲み会。。。と、息つく間もないのが現状です。
それでもビクトリアのフリンジは他のフェスティバルにくらべて参加しているショウが少ないので(60以下。バンクーバーフリンジは倍近い)比較的競争が少なく、「まるでバケーションのよう」と言っていたアーティストもいました。これがエドモントンやウィニペグなどの大きなフェスティバルだと、競争も多く大変そうです。ですが同じフリンジ・サーキットを回っている他のアーティストとは顔見知りなので仲間意識も芽生え、「サマーキャンプみたい」という言葉には思わず頷いてしまいました。
最終日のパーティのようす
最終日のパーティのようす
私はここビクトリアにいて、移動は全くしていませんが、この12日間、毎日1本か2本のショウを観て、時間があれば列に並んでいるお客さんと話しをしながらIntrepid Theatreの資金集めをし、夜はフリンジクラブでアーティストやスタッフと話しをするという毎日で、疲れましたが、日本でいうとまさに12日間文化祭をやったあとのような気分です。
Kiss Around Pass Aroundのポスター
Kiss Around Pass Aroundのポスター
Kiss Around Pass Around (ケサランパサランって、英語でいうとこう聞こえるでしょう?うまいネーミング!)というタイトルのショウを上演されて、2007年からフリンジサーキットを回られているShoshinzのヤノミさんにお話をうかがいました。
私はフリンジのスピリットがとても好きです。誰にでも表現の機会が与えられること、安いチケットでいろんな作品を観ることができること、それぞれの地域に根ざしていること、などなど魅力がいっぱいです。 また、私はどの劇団にもいわゆるプロダクション(芸能事務所)にも所属していない完全単独パフォーマーのため、国内で劇場公演を打つことはほとんど不可能です。特に日本ではソロショーは非常に稀で、さらに女性ソロで劇場公演などはよほどの有名な女優でない限り観たことがありません。 また、フィジカルシアターも日本ではあまり多くないと思います。(舞踏やダンスなどを除くと、ですが。) フリンジは私にとって重要な劇場公演の機会です。世界中のアーティストに出会えて、お互いにインスパイアし合えるのもたいへん貴重で幸せなことです。

私もヤノミさんのおっしゃることがよくわかります。いろんなところからいろんな人が(中には結構クレイジーな人も!)集まり、みんなでそれぞれのアートを表現しあう、フリンジってなんて素晴らしいんだろうと私は感心しきりでした。現在日本では世界で行われているようなサーキットに入るような正式な(?)フリンジは実質ないようですが、草の根レベルで短期でやっている都市はあるようです。いつか、日本でフリンジができたらいいなあ、と思っています。

楽しいけど、疲れるし、正直そんなにお金にもならないのに、何故アーティスト達はフリンジサーキットを回り続けるのでしょうか?

「好きなことをやって少しでもお金になるなら」「新人なので少しでもステージ数を踏むため」「多くの人の目にとまって発掘されるチャンス」と言う人も多いでしょう。でも、私が沢山のアーティストと話してみて感じた答えは、みんな、これをやらないではいられない人達だから。スタンダップ・コメディであろうとモダンダンスであろうと、自分を表現する術を見つけた人達は、表現せずにはいられないのだと思うのです。 Things we do for love、愛のためにやること、というフレーズがありますが、まさにアートを愛する人達には、実際に地元の観客にじかに触れあえる、フリンジというイベントが自分のコアな部分に響くのでは、と私は考えています。かくいう私は、パフォーマーではありませんが、書くことが私のアートで、何かに感動すると書かずにはいられません。

ポートランドでの世界征服サミットに関してはこれまでにも何度も書いていますが、日本で似たようなイベントができないものか。。。と考えたことがありました。今回のフリンジも、日本で是非やってみたい、という気がしてきましたが、ヤノミさん曰く、日本は劇場費が異様に高いのと、言葉の壁があるのでかなり大変だとのことでした。また、アーティストをボランティアで泊めるビレットも難しそうです。だからなのか、日本のアーティストも沢山海外のフリンジに出てきているようです。数年前には流山児事務所さんが寺山修司原作の「花札伝綺」で大人気でしたし(ちなみにうちの夫は3公演すべて最前列で観て大絶賛でした)、パペットカンパニーの望ノ社や、ビクトリア大学を卒業して今は高知で活躍されている浜田あゆみさんもフリンジ卒業生です。

Birdmannのポスター
Birdmannのポスター

同じく日本人でフリンジサーキットを2012年から回っているEggさんにもお話を伺いました。

フリンジの魅力、特にB.C. Fringe (Victoria と Vancouver) の魅力はアーティストと観客を繋げる努力を怠らずにいるところ。それと、熱狂的なフリンジファン(観客)が沢山いる事。どこのフリンジフェスティバルも同じではないです。カナデイアンフリンジサーキット(CAFF)は一番アーティストフレンドリーです。ビクトリアでのパフォーマンスは今回が初めてだったのですが、お客さん達が気軽に道端で声をかけてきてくれたり、”夕べのショーは良かったよ。みんなに教えるから。”などencouragementをとても多く貰って嬉しく又驚きました。全ショー完売だったのもこの街柄のおかげだと思います。

また、カナダのフリンジだとある程度お金を稼ぐことができるけれど、オーストラリアのフリンジだと会場費に毎晩$200ほどかかり、プラス、ビレットのシステムがないので宿泊費もかかるとのことでした。これは痛い。。。今回のフリンジにはオーストラリアからのアーティストが沢山来ていましたがそのへんも関係あるのでしょうかね。

言うまでも無いことですが、アーティストのみなさんは本当に大変な思いをしながら様々なショウを見せてくれているのですね。もし良いショウをみたら、ぜひひとこと「良かったよ」って、声をかけてあげて下さい。
ちなみに今日からバンクーバーフリンジが始まります。お近くの方は是非行ってみて下さい。

もし、お住まいの地域でフリンジフェスティバルが開催される時は、是非足を伸ばしてみて下さいね。